JTWO 日本旅行作家協会・会員個人ページ

中村 浩美  NAKAMURA,Hiromi       Last updated '17.5.4

●プロフィール
Photo by Paco Kazu Takahashi

 科学ジャーナリスト、航空評論家、キャスター、トーク・コーディネーター
 1946年2月8日、札幌市生まれ。同志社大学法学部法律学科(国際法/宇宙法)卒。月刊「航空ジャーナル」編集長を経て、1984年に航空評論家、科学ジャーナリスト、TVキャスターとして独立、現在に至る。航空、宇宙開発、先端技術、エネルギー、地球環境、メディア、国際関係、交通、旅行文化など幅広いジャンルで、執筆、講演、テレビ番組のキャスター、コメンテイター、各種イベントやシンポジウムのコーディネーターとして活動中。
 東京工業大学統合研究院特任教授、東海大学総合科学技術研究所特別研究員、国の宇宙開発委員会専門委員、原子力委員会専門委員、国土地理院研究評価委員、日本原子力研究開発機構研究評価委員なども歴任。また、宇宙や地球の話を
、子供たちや親子に直接語りかける「親子で学ぶサイエンススクール」(http://www.kamijo.co.jp/school)を全国で開催するなど、宇宙計画への理解増進や、科学知識の普及啓蒙に積極的に取り組んでいる。
また当協会の専務理事を長く務めるほか、NPOエンジョイ・エコ・ラボラトリー理事長、NPO羽田航空宇宙科学館推進会議理事長としても活動している。
 趣味は、博物学研究、ルネサンス研究、パリのパサージュ散策、読書、映画、ドライブ、スポーツ観戦。
[連絡先]〒279‐0013 千葉県浦安市日の出1丁目3-4‐808 TEL:047(352)5895 fax:047(380)1490
E‐mail:husky46@jcom.home.ne.jp


◆おもな著書

『飛行機をめぐる冒険』(ポプラ社)、『 FLIGHT DECK OPERATIONS 空母キティホークと飛行甲板要員たち』(共著・アスキー・メディアワークス)、『YS-11世界を翔けた日本の翼』(祥伝社新書)、『YS-11 栄光の翼』(アサヒDVDブック)、『読んで愉しい旅客機の旅』(光文社新書)、『旅客機大全』(新潮文庫)、『最新 宇宙開発がよくわかる本』(中経出版)、『ブライトリング・ファイターズ』(共著・ぶんか社)、『飛行機王国アメリカ探訪』(NTT出版)、『ブラックホールは宇宙を滅ぼすか?』(翻訳・東海大学出版会)、『火星雑学ノート』(ダイヤモンド社)、『旅客機雑学ノート』(ダイヤモンド社)、『あした宇宙へ』(廣済堂出版)、『衛星情報が世界を変えた』(共著・徳間書店)、『空飛ぶ巨大技術ジャンボ』(講談社現代新書)、『ザ・チャレンジャー』(航空ジャーナル社)、『スペースシャトル』(グラフ社)、『ハレー彗星を探る!』(航空ジャーナル社)他

PORTRAIT


<最近の活動>
<2017年 JAN.~MAR.>
COVERAGE & EVENT
 BREITLING DC-3 WORLD TOUR 「ブライトリングDC-3 世界一周飛行に出発」
 
世界一周飛行へジュネーブ空港を出発するBREITLING DC-3 
 2017年3月9日、ブライトリングDC-3(HB-IRJ)が、世界一周飛行へジュネーブ空港を飛び立った。9月まで続く、長い冒険飛行が始まった。ダグラスDC-3は、言わずと知れた近代輸送機のパイオニアの名機だ。初飛行は1935年。ブライトリングDC-3は1940年製で、最初のユーザーはアメリカン航空だった。2009年にブライトリング社の支援を得て、フランシスコ・アグーロがスイスに空輸する以前は、アメリカのリージョナル航空シャンプラン・エアが、完璧に修復した状態で所有していた。製造から77年の今年、ブライトリングDC-3はアグーロ機長とクルーによって、世界一周飛行にチャレンジすることになったのだ。アグーロ機長は、ブッシュパイロット、エアラインパイロットとしての経験豊富なパイロットで、クラシック旅客機の維持・保存、飛行展示にも情熱を燃やすナイスガイだ。ブライトリング社のサポートを得て、ブライトリング・スーパーコンステレーション、ブライトリングDC-3のフライトを、ヨーロッパ各地でのエアショーで披露している。
 ブライトリングDC-3は、世界一周飛行の途上でJAPAN TOURを行なう。1か月強日本に滞在し、震災の被災地を慰問する訪問飛行などを実施することになっている。そのJAPAN TOURで、僕は各地でのゲスト・フライトのレクチャラー役を務めるので、この歴史的な飛行のスタートを見守るため、ジュネーブへ赴いたのだった。
 3月9日午前、ジュネーブ・フォーシーズンズ・ホテルで、アグーロ機長が世界一周飛行の概要を説明するプレスコンファレンス開催。その後、ブライトリング・ブティック・ジュネーブで、世界一周飛行のDC-3に搭載されるブライトリング・ナビタイマー(500個限定生産、飛行後に発売予定)が発表・披露され、午後PRESS FLIGHTが実施された。
 ブライトリングDC-3のキャビンシートは30席が標準だが、世界一周飛行に当たって、キャビン中央に補助燃料タンクの設置スペースを確保するため、前方8席、後方6席の計14席配置となっている。従ってPRESS FLIGHTに搭乗できたプレスは14名のみ。もちろん僕もその一人だ。
 ジュネーブ空港のプライベート機用ターミナルC-2から、マイクロバスでチャーター機やプライベート機のランプへ向かう。ブライトリングDC-3は、尾輪式独特の斜め上を向いた姿勢で、黄色と黒のブライトリング・フラッグに守られて駐機していた。ツンと上を向いた機首が可愛い。イルカの鼻先のようだ。そう言えば、愛読書のひとつディック・フランシスの『煙幕』に、こんな一節があった。『ジャーミストン競馬場に近い小さなランド飛行場で、尾輪に腰をかけ、いるかの鼻先のような機首を、飛ぶのを楽しみにしているかのように空に向けて、二機のDC-3が待っていた。』まさにそういう風情だ。

 
PRESS FLIGHTの準備中   BREITLING DC-3の後部座席
 プラット&ホイットニーR-1830ツインワスプ始動。エンジンのランナップが結構長い印象だった。僕にとってDC-3でのフライトは、1980年代にアメリカ(ネヴァダ州)で搭乗して以来だ。当時は感激したものだが、記憶はかなり薄れている。テイクオフ。振動と揺れが、乗り慣れたジェット旅客機とは違う。そしてエンジン音。振動とエンジン・サウンドはやはりレシプロ機のものだ。DC-3の窓は、四角形で大きい。飛行高度が低いことと相まって、眺望が良く、遊覧飛行には向いている。遠くに雪を頂いたスイスアルプス、眼下にジュネーブ市街とレマン湖(ジュネーブ湖)。観光スポットのジェット噴水もよく見える。約30分間のフライトを楽しんだ。 
 
PRESS FLIGHTの客席で   PRESS FLIGHTでジュネーブ空港へのアプローチ
 PRESS FLIGHTを終え、給油を終えた午後4時過ぎ、ブライトリングDC-3はジュネーブ空港を離陸、正式に世界一周飛行に出発した。僕たちはランプで見送った。当初は、ジュネーブからザグレブへ向かう予定だったが、離陸時刻が遅くなり、スイスアルプス越えの視界の確保が難しいと判断、この日はフランスのアヴィニヨンで1泊、翌10日にアヴィニヨンからザグレブ(クロアチア)へ向かった。
 クロアチア領内に入ると、クロアチア空軍のMiG-21がフレンドリー・インターセプト。表敬の出迎えだ。その後6機のピラタスPC-9によるWings of Stormが、ストーム・フォーメーションでDC-3をエスコートしてくれた。最初の寄港地ザグレブ訪問で、DC-3はまず大歓迎を受けた。ザグレブを発ったDC-3は、アテネ(ギリシャ)でストップオーバーし、テルアビブ(イスラエル)へ。3月14日、テルアビブからアンマン(ヨルダン)へ。アンマンでも大歓迎で迎えられた。ヨルダン空軍のエアロバティックチームRoyal Jordanian Falcons(Extra 300L×4機)と、フォーメーション・フライトを実施。ファルコンズは、バーレーンへ向かうDC-3を途中までエスコートしてくれた。(以下の写真提供は、BREITLING & Mr. Katsuhiko Tokunaga)
クロアチア空軍のMiG-21がフレンドリー・インターセプト ヨルダン空軍のRoyal Jordanian Falconsと編隊飛行
  バーレーンでストップオーバーし、次の訪問地ドーハ(カタール)へ。ドーハではVIPゲスト・フライトを実施、テレビ局(アル・ジャジーラ)の取材も受けた。中東の旅が続き、3月21日ドーハからペルシャ湾上空を飛行しドバイ(UAE)へ。ドバイでもプレス・フライト、ゲスト・フライトを実施。人工島パーム・ジュメイラ、世界最高層のタワー建築ブルジュ・ハリファなどのランドマークを背景に飛ぶドバイでのフライトは、コクピットクルーにとっても素晴らしい体験だったとのこと。フォトジェニックなドバイで、フォトミッションも大成功。24日は終日、整備作業に当てられた。
ドバイのパーム・ジュメイラを眼下に飛ぶDC-3 ブルジュ・ハリファなどドバイのスカイラインとDC-3
 3月25日、中東に別れを告げてアジアへ。ドバイからカラチ(パキスタン)に到着。ここで燃料給油。ドラム缶から手動での航空ガソリンの給油だ。長距離フライトが控えているので、キャビンに補助燃料タンクを設置。前部座席も取り外した。これがかなりの難作業で、11時間もかかったという。26日、カラチから灼熱の(日陰でも41度C)ナーグプル(インド)に到着。このフライトから、コパイロットがガブリエル・イベックからポール・ベイズリーに交代。フランシスコは機長を続ける。ナーグプルでもフレンドリーな大歓迎を受け、ゲスト・フライトも実施。
カラチで補助燃料タンクを客室内に設置 灼熱のナーグプル(インド)到着
 予定では、ナーグプルからチッタゴン(バングラデシュ)へ向かい、ここで給油することになっていた。ところがチッタゴンで予約してあった航空ガソリンが、消えてしまった! 盗まれたのか、横流しされたのか、単に業者がいい加減だったのか不明。とにかくチッタゴンでの給油は不可。次の目的地はプーケット(タイ)の予定だったが、とても燃料がもたない。風向や天気情報を慎重に調べ、航路を検討した結果、ナーグプルからチェンマイ(タイ)へ直行することに決定。8時間7分かけて、チェンマイに無事着陸。この機体が1940年に製造されて以来、最長の飛行記録だろうとフランシスコは言う(6月には、帯広からアリューシャンのシェミアまでの、11時間に及ぶフライトが控えているが)。たどり着いたチェンマイで、まさかのエンジントラブル発生。右エンジンが始動しない! キャブレターと燃料ポンプの不具合が原因と判明。オーバーホール済みのキャブレターが手配でき、機内に搭載してあった予備の燃料ポンプと交換した結果、エンジン始動に成功。その知らせを日本で聞いた僕は、ほっと胸をなでおろした。
プーケット上空を飛ぶBREITLING DC-3 マレーシア空軍のPC-7と編隊飛行
 エンジンが回復した翌日の4月1日、チェンマイからフォトミッションのためプーケット(タイ)へ。プーケットのココナッツ島やピピ島上空からの眺めには、フランシスコも感激したという。フォトミッション終了直後に、プーケットはサンダーストームに襲われたとのことだった。DC-3は、プーケットからクアラルンプール(マレーシア)へ。WORLD TOURのオフィシャル・カメラマンである徳永克彦さんが、マレーシア空軍のPC-7とともにDC-3をフレンドリー・インターセプト。アロースター付近でマレーシア空軍のピラタスPC-7の編隊が、DC-3をお出迎えだ。クアラルンプールまでのルートで、フォーメーション・フライトを実施しながら、無事クアラルンプールに着陸。続いてクアラルンプール上空でフォトミッション。世界一のツインタワー、ペトロナスタワーズやクアラルンプールタワーなどの高層建築を背景に、徳永さんの傑作が数々生まれた。プレス・フライト、ゲスト・フライトも実施し、4日朝クアラルンプールからシンガポールへ向かった。着陸したシンガポールのセレター空港では、放水礼の歓迎を受けた。シンガポール到着で、BREITLING DC-3 WORLD TOURの第1レグが終了。DC-3は、JAPAN TOURを含む東南アジア~東アジアへのフライトに備えて、およそ3週間に及ぶメインテナンスに入った。整備を終えたBREITLING DC-3は、4月21日にシンガポールを発ち、フィリピン、中国、台湾、日本への第2レグを目指す。
クアラルンプールの高層建築群を背景に飛ぶDC-3 シンガポールのセレター空港で放水礼の歓迎を受ける

「ピラタス社」(PILATUS Aircraft Ltd) 訪問
 スイスが誇る飛行機メーカー、ピラタス社を訪問。いかにもスイスらしい風景の中に、ピラタス社はある。練習機PC-7やPC-9で知られるピラタス社だが、現在の生産主力機は、高等練習機PC-21と輸送機のPC-12.だ。PC-21はスイス空軍、シンガポール空軍、UAE空軍で採用されている。シンガポール空軍向けPC-21が、生産ラインにも、フライトラインにも並んでいた。柱がない木造の建築物としてはヨーロッパで二番目の大きさという、ファイナルアッセンブリーの工場には、PC-21とPC-12が並んでいた。PC-12は生産1,000機を超えたベストセラー機で、アッセンブリーラインは活況を呈していた。今注目されているのが、ピラタス社初のジェットビジネス機のPC-24だが、フライトテストの準備中ということで、見学できなかったのが残念。
ピラタス社会長補佐のJerome Zbindenn氏と いかにもスイスらしい風景とシンガポール向け高等練習機PC-21
     
PC-12のアッセンブリーライン    輸送機PC-12はピラタス社のベストセラー機だ 

「瑞浪超深地層研究所」視察

 日本原子力研究開発機構(JAEA)の、瑞浪超深地層研究所を、JAEA地層処分研究開発・評価委員会の委員の先生たちと共に視察。瑞浪では現在、深度500メートルに掘削した南北の地下坑道で、工学的対策技術の開発、物質移動モデル化技術の開発などが行なわれている。いずれも高レベル放射性廃棄物の地層処分のための研究開発だ。深度500メートルの坑道へは、途中まで工事用エレベーター、最後は90段の螺旋階段で到達。
深度500メートルの南北坑道の連結部 深度500メートルの研究アクセス坑道
冠水後の水圧や力学変化を観測する冠水坑道の止水壁 視察を終えて、マスコットのモグラ君と記念撮影

美濃歌舞伎博物館「相生座」訪問
 昨年、JTWOの特別例会を、岐阜県郡上市で開催した際に、岐阜の地歌舞伎について講演していただいた小栗幸江さんが館長を務める「ミュージアム中山道」と、美濃歌舞伎博物館「相生座」を訪問するため、岐阜県瑞浪市へ。「ミュージアム中山道」は、小栗家のコレクションの展示館。歌舞伎衣裳、鎧兜、刀剣、陶磁器などのコレクションが見事だった。館内は撮影禁止なので、残念ながらコレクションは紹介できない。瑞浪市日吉町の山中に建つ「相生座」は、小栗さんが移築・再生した芝居小屋だ。歌舞伎を上演できる現役の芝居小屋であると共に、2階席など一部が歌舞伎博物館として公開されている。たくさんの衣裳を保存している地歌舞伎の上演は勿論のこと、プロの歌舞伎も上演される。今年も中村勘三郎一座がやってくるそうだ。小栗さんに座内を案内していただいて、舞台にも立たせていただいた。必見の価値ある芝居小屋「相生座」である。
小栗さんが館長を務める「ミュージアム中山道」 現役の芝居小屋「相生座」の外観
「相生座」の客席 「相生座」の舞台で記念撮影

「6日間だけの羽田航空博物館」
 2月23日~28日、羽田図書館(大田区羽田1丁目)で、僕が理事長を務めるHASM(羽田航空宇宙博物館推進会議)が、ミニ航空博物館とも言うべき展示会を開催。いつの日にか羽田の地に航空博物館を実現したいという、NPOとしての僕たちの活動「羽田航空博物館プロジェクト」の一環となる展示会だ。タイトルのとおり6日間だけの開催だったが、地元大田区の皆さんや航空ファンの皆さんに観ていただいた。展示内容の中心は、写真の収集活動を続けている「私の羽田アルバム」写真展と、故・斎藤茂太先生のエアラインバッグ・コレクションの展示。さらに電動ヒコーキ操縦体験も実施し、親子連れの皆さんに楽しんでいただいた。
ミニ航空博物館の入り口 展示の中心は「私の羽田アルバム」写真展
故・斎藤茂太先生のエアラインバッグ・コレクションの一部も展示 理事長あいさつ文の前で

WRITING & COMENT
 執筆活動は、今期はETT(フォーラム・エネルギーを考える)ホームページの、「私はこう思う!」コーナーへの寄稿のみ。地球温暖化対策への貢献が期待される、日本の人工衛星、温室効果ガス観測技術衛星、気候変動観測衛星がテーマだ。メディアへのコメントや解説もいくつか行なった。新千歳空港で発生した、ANAのDHC-8が誘導路外の雪の中へ突っ込んだ事故(1月19日)について、北海道新聞にコメント。着陸後に、滑走路から誘導路へのターンに失敗したもの。スリップかスピードオーバーか、操縦輪のコントロールミスか。3月5日に起こった、長野県の防災ヘリコプタ・ベル214が山中に墜落した事故について、毎日新聞、時事通信、共同通信各社にコメント。直接の事故原因は、メインロータあるいはテイルロータが樹木に接触したことで、コントロールを失ったものだろう。
このベル214は救助訓練に向かっていたものだが、訓練地点に到着する前に起こった事故だった。なぜ途中で樹木に接触する事態になったかについては、訓練前に山岳地の下見をしようとして高度を下げたものと、僕は想像した(後に事項調査でも同じ見解が示された)。
ETTのHPへの寄稿 長野県防災ヘリの墜落事故を報じる記事(読売新聞)

『僕の交書録』 <BOOKS MY BEST  2017JAN.~MAR.>
 2017年最初の3か月間の読書歴は、購入が20冊、贈呈いただいたのが5冊、再読が2冊の計27冊。今期のMY BESTは、以下の9作品11冊(順番は読んだ順)。
 塩野七生さんの『ギリシア人の物語』は全3巻の2巻目。年に1冊の刊行だから、1巻目を少し読み返さないと2巻目に入れない。『ローマ人の物語』のほうがドラマチックで面白かったが、ギリシア人もまた興味深い。3巻目をまた1年待つとしよう。
 今期最大の話題は、鳴り物入りで登場した『騎士団長殺し』第1部、第2部。まさにムラカミ・ワールド。『1Q84』よりも、こちらのほうが僕は好きだ。しかし物語は終わっていないと思う。第3部が書かれることになるだろう。ご贔屓作家・原田マハさんの新作2作品に出会えたのは、今期の収穫。特に『リーチ先生』が良かった(4月に第36回新田次郎文学賞を受賞が決まった)。舞台が美術界なら、マハさんの独壇場の感がある。ご贔屓と言えば、海外ではキャロル・オコンネル。彼女が創造したヒロイン、氷の天使キャシー・マロリーがご贔屓なのだ。シリーズ9作目の「ルート66」で、ついにこのクールな女刑事の秘密が明らかになる。おなじみクロンビーの『警視』シリーズ(英)、初見参のダール(米)、クレフェルト(デンマーク)、ロイ(米)と、ミステリ界は快調。特にローリー・ロイの『地中の記憶』は、ミステリを超えて純文学だった。ぼくにとってミステリ読書は、平凡な日常のスパイスだ。

[ Non Fiction ]
『ギリシア人の物語 Ⅱ 民主政の成熟と崩壊』   塩野七生                   (新潮社)
[ Fiction ]
『リーチ先生』                   原田マハ                    (集英社)
『インヴィジブル・シティ』            ジュリア・ダール        (ハヤカワ・ミステリ文庫)
『サロメ SALOME』                原田マハ                  (文藝春秋)
『凍てつく街角』                 ミケール・カッツ・クレフェルト  (ハヤカワ・ミステリ)
『騎士団長殺し  第1部 顕れるイデア編』      村上春樹                   (新潮社)
『騎士団長殺し  第2部 遷ろうメタファー編』  村上春樹                    (新潮社)
『警視の挑戦』                  デボラ・クロンビー             (講談社文庫)
『ルート66』   (上・下)           キャロル・オコンネル           (創元推理文庫)
『地中の記憶』                  ローリー・ロイ           (ハヤカワ・ミステリ)

『僕のシネマテーク』 CINEMAS MY BEST 2017 JAN.~MAR.
  1月~3月の映画鑑賞歴は、計23本。劇場鑑賞14本、試写1本、ヨーロッパ往復の航空機内でのInflight Movieが5本。機内では国内公開前の、『メッセージ』と『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が観られたのが収穫だった。いずれもアカデミー賞で複数部門ノミネート作品。今期のMY BESTは、以下の10本(順番は鑑賞順)。
 今期のハイライトは、何と言っても「ラ・ラ・ランド」だろう。タイトル前の、渋滞する高速道路での踊りと歌のパフォーマンスで、すでにこの映画の評価は決まった。ハリウッド・ミュージカルへのオマージュにも溢れているし、文句なしの傑作。第89回アカデミー賞6部門で受賞したが、作品賞に選ばれなかったのが残念。公開初日の初回に観て、また10日後にも観た。『ジャッキー』は、ナタリー・ポートマンが『ブラック・スワン』に迫る名演技で魅せる。
 SFファンに嬉しい作品が『メッセージ』と『パッセンジャー』。『パッセンジャー』は宇宙船のデザインも良いけれど、ラストのオチが特に良いですね! 監督で観たのが『ミス・ペレグレン』。いつも期待を裏切らないティム・バートン監督。奇妙で魅力的なバートン・ワールド炸裂。映像的に面白かったのが『タンジェリン』。全編スマートフォンで撮影された映画だ(そういう時代になったのですね)。LAに生きるトランスジェンダーの日常が、斬新な撮影方法でリアルに描かれていた。『幸せなひとりぼっち』はスウェーデン映画。不器用な生き方しかできない、不機嫌なじいさんが良い(ほんとは優しい)。スウェーデン国民の5人に1人が観たという、ヒューマンドラマだ。じいさんに共感。
『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(EYE IN THE SKY)                 ギャヴィン・フッド監督
『幸せなひとりぼっち』(EN MAN SOM HETER OVE)                        ハンネス・ホルム監督
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』(Miss Peregrine’s Home for Peculiar Children)       ティム・バートン監督
『タンジェリン』(Tangerine)                                  ショーン・ベイカー監督
『エゴン・シーレ 死と乙女』(EGON SCHIELE Death and The Maiden)            デイーター・ベルナー監督
『ラ・ラ・ランド』(LA LA LAND)                              デイミアン・チャゼル監督
『メッセージ』 (Arrival)                                  ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(MANCHESTER BY THE SEA)               ケネス・ロナーガン監督
『パッセンジャー』(PASSENGER)                          モルテン・ティルドゥム監督
『ジャッキー  ファーストレディ 最後の使命』(JACKIE)                 パブロ・ラライン監督

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