「BREITLING DC-3 JAPAN TOUR」
★JAPAN TOUR in FUKUSHIMA
 ジャパンツアーの最後の公式訪問地は、2013年にブライトリング・ジェットチームも訪問した福島だ。5月25日に福島市で歓迎式典と、プレスカンファレンスが開かれた。こちらの出席はフランシスコ機長だけだったで、他のクルーと僕たちは郡山市で焼肉(米沢牛)パーティー。考えてみると、熊本(肥後牛)、神戸(神戸牛)、そして福島と、美味しい牛肉を食べ続けてきたジャパンツアーだった。
 さて福島イベントの初日は、5月26日。DC-3は福島空港のカーゴビル前のNo6駐機バースに駐機しており、イベント会場はターミナルビル南側の国際貨物施設に設けた特設テント会場だ。熊本、神戸と好天に恵まれ続けたが、福島は小雨まじりの曇天。雲高が低い。8時過ぎにクルーと共に、郡山のホテルから福島空港へ。9:50頃から1回目のレクチュア。福島最初のパッセンジャーフライトのゲストは、大笹生小学校の6年生と小林香福島市長だ。福島市内と郡山市上空を周回する予定だったが、悪天候で飛行は中止。しかしDC-3搭乗の雰囲気を味わってもらおうと、フランシスコ機長は空港内のタキシングに予定を変更した。飛ぶことはできなかったものの、滑走路をタキシングできたことで子供たちは満足した様子で、笑顔で乗降ステップを降りてきた。機体の前で記念式典。小林市長、児童代表の挨拶があって、記念に「土湯こけし」と、子供たちが書いた「Welcome to Fukushima. Thank you very much.」の寄せ書き色紙がクルーに贈られた。返礼の品はサイン入りのDC-3の写真パネル。フランシスコ機長は、早速「土湯こけし」と色紙を機長席において記念写真を撮った。
大笹生小学校の児童、小林市長と記念撮影 贈られた「土湯こけし」と色紙は機長席に
 午後のフライトのゲストは、小塩江中学校の生徒と全日空のOBとOGだ。ジャパンツアーのキッズフライトのゲストは小学生が中心で、中学生が搭乗するのはここ福島だけ。ワールドツアーでキッズフライトが行なわれるのは、ジャパンツアーだけだ。13時過ぎから、午後の2回のフライトのゲストにレクチュア。今日最後のフライトには、全日空がDC-3を運航していた時代に、コパイロットを務めた経験のある昼間才蔵さん(81歳)、CA(当時はスチュワーデス)として乗務経験のある林道子さん(76歳)も、ゲストとして搭乗する。レクチュアの中で、このお二人のベテランも紹介した。天候はなかなか好転しない。せっかくのフライトの機会だけれど、残念ながらタキシングだけに終わるかも知れないと、お話ししているところにスタッフから連絡が入った。雲高が低く、当初予定していた会津へのフライトは無理だけれど、今なら空港と郡山周辺を周回するローカルフライトは可能と、フランシスコ機長が言っているという。中学生諸君から、歓声があがった。早々にレクチュアを切り上げて、皆さんをランプへ送りだす。僕もカメラを抱えてランプへ。福島での飛行写真がまだ撮れていないのだ。
福島でのレクチュア

かつて全日空のDC-3で飛んだ昼間さんと林さん。空港職員の
女性が着用しているのは、全日空初代スチュワーデスの制服。
 小塩江中学校の生徒たちのフライトを眺めながら、昼間さん、林さんとDC-3談議。エール・フランスでDC-3のメインテナンスを長く手掛けてきた、メカニックのジェラールも交えて、DC-3のエピソードは、尽きない。福島空港は滑走路の向こう側が、緑の丘になっているから、曇天とはいえ、離着陸するDC-3の姿が映える。福島空港(うつくしまふくしま)はグリーンエアポートだ。
福島空港をテイクオフするDC-3 福島空港上空を場周飛行するDC-3
 この日3回目のフライトに、昼間さんも林さんも無事搭乗することができた。フライトを終えたお二人も、子供たち同様にやはり興奮気味だった。昼間さんはエンジンサウンドが懐かしかったと、林さんは尾輪式キャビンの傾斜に当時の想い出が甦ったと話してくれた。小雨まじりの曇天の下、ローカルフライトとはいえ、フライトを体験していただけて良かった。実はこの日、ビデオグラファーのグレゴリーは会津へ行っていた。鶴ヶ城上空を飛ぶDC-3をビデオに収めるためだ。皮肉なことに会津地方は晴天だったという。ところが、待てど暮らせどDC-3はやって来ない。空しくロングドライブで郡山に戻ったそうだ。夜、ホテルのバーで、みんなでグレゴリーの愚痴を聞いた次第。
 クルーは各地で日本の美味しい牛肉を堪能してきたが、同時に寿司などの日本食や、日本酒、日本製ワインも楽しんだ。彼らは日本食のファンだ。特に日本のお米が美味しいという、なかなかの通なのだ。最後に残ったリクエストが、美味しい日本のウイスキーを飲みたいというものだった。幸いホテルのバーに「竹鶴17年」があった。僕がリコメンドして、みんなでこのニッカの銘品を楽しんだ。絶賛だった。
 この夜は、飛行機談議にも花が咲いた。特に「優れたパイロットとは」というテーマが興味深かった。フランシスコもラファエルも、最新のハイテク旅客機を操縦しているが、やはりクラシック機のファンらしく、デジタル化されていない機体にこそ操縦の醍醐味があるし、マニュアル操縦にこそ操縦の技術が求められるとのことだ。危難を避ける究極の技術は、マニュアル操縦の経験で培われるとのことだった。
 キッズフライトのたびに、フランシスコとラファエルは、子供たちをコクピットに招き入れ、直接話をするサービスを繰り返していた。初めて飛行機に乗るという子供たちも少なくなかった。彼らにとって初めての飛行機がブライトリングDC-3で、それを自分が操縦したということに、特にラファエルは感動していた。飛行機が好きになった、飛行機の歴史に興味がわいたと、子供たちがそろって言ってくれたことに、フランシスコは満足そうだった。子供たちに、将来飛行機の仕事をしたいかと聞くのも毎回のことだった。ほとんどの子供がイエスと答えたそうだが、意外なことにパイロットになりたいという子は一人もいなかったという。何とみんなメカニックになりたいと答えたというのだ。機体の点検をしたり、パイロットに手信号で合図を送ったりする姿が、かっこよく映ったらしい。パイロットの二人はガッカリしていたが、メカニックのジェラールはニッコリだ。『ジェラールが、日本ではヒーローだね!』と乾杯。

   
飛行を前にフランシスコ機長とブライトリング・ガールと   飛行中のコクピットでの3人 
  5月27日は、3回のパッセンジャーフライト、機内見学会、観覧エリアからの外観見学会が予定されていた。朝食の時に、フランシスコ機長にお願いした。今日が僕にとっての最後のチャンスなので、コクピットのジャンプシートで飛ばせてほしいと。客席はゲストで常に満杯だし、ジャンプシートには管制塔との交信の補助などの役割もあるから、熊本で乗って以来僕にはフライトのチャンスがなかったのだ。幸い機長のOKがもらえた。レクチュアの間隙をぬって、2回目のフライトに搭乗できることになった。
 この日も8時過ぎに空港へ。9時過ぎから1回目のレクチュア。クラブ・ブライトリングのメンバーとメディアがゲストだ。続いて10時過ぎから、やはりクラブ・ブライトリングのメンバーとメディアのゲストにレクチュア。この2回目のフライトで、僕も飛んだ。フランシスコ機長とブライトリング・ガールに迎えられて、機内へ。この日も福島地方は小雨まじりの曇天なので、ローカルフライトだ。
 小さな跳ね上げ式のジャンプシートにつく。機長席にラファエル、コパイロット席にフランシスコ。エンジンスタート前のチェックリスト確認から、コクピットの作業をつぶさに見る。エンジンスタート。ランナップ。タキシング。ランウェイエンドでのチェックリスト。そしてテイクオフラン。右手に空港ターミナルビル、左手に緑ののり面の丘を見ながら滑走路を疾走する。テイクオフのランは短い。900m弱でエアボーン。
 須賀川市の田園風景が、左右のコクピットウインドゥに広がる。曇天で視界もクリアではないが、飛行高度が低いので、下界の眺めは悪くない。フランシスコが自撮りで、コクピットの3人の写真を撮ってくれた。蛇行する阿武隈川と周囲の田園風景。やがて郡山の市街地が見えてきた。郡山駅が見えた。開成山野球場と開成山公園が良く見える。飛行はスムーズだ。旋回して福島空港へ戻る。空港上空で2回場周飛行。コクピットウインドゥには雨粒。ランウェイが迫る。ランディングもスムーズだった。水平姿勢から尾輪式の機首上げ姿勢になって、ランプまでタキシング。ジャンプシートでのフライトの終わりだ。
コクピットで経験するテイクオフ 空港ビルを右下に見て福島空港を場周飛行
 DC-3のコクピットから観た郡山駅   DC-3のコクピットからの開成山野球場、開成山公園の眺め 
 満足のうちにジャンプシートでのフライトを終えて、控室のテントに戻ると、ミカ(ミカエル)ブラジョー氏の姿があった。来週開催される「レッドブル・エアレース2017千葉」に出場する、ブライトリング・レーシングチームのパイロットだ。同じブライトリング・ファミリーとして、DC-3を応援するため福島空港へやって来たのだ。昼食後、3回目のフライトに向けてレクチュア。クラブ・ブライトリング・メンバーのお子さんたちと、メディアのためのパッセンジャーフライトだ。これにミカ・ブラジョーも乗ることになった。子供たちにはサプライズ。大喜びだった。やはりレーシング・パイロットは人気がある。
 ミカと子供たちのフライトが終わって、最後のレクチュア。これは機内見学と観覧エリアからの見学のゲスト向けだ。搭乗権の抽選に外れた人たちだが、100人ほどが参加した。機内見学が終わった15時すぎから、急きょトークショーが行なわれることになった。フランシスコ機長、ミカ、そして僕の3人によるトークショーだ。ゲストの皆さんにとっては、ビッグ・プレゼントとなった。フランシスコ機長は、これまでのジャパンツアーの感想や、これからの太平洋横断飛行などについて語ってくれた。ミカはエアレースへの抱負を語り、DC-3のワールドツアーにエールを送った。このトークショー出演が、僕にとってジャパンツアーにおける最後の仕事となった。

フランシスコ機長、ミカ・ブラジョーと共にトークショー