第2回「斎藤茂太賞」決まる!

 一般社団法人日本旅行作家協会(会長/下重暁子・会員数約220人)は、創立会長の故・斎藤茂太氏(作家・精神科医)の功績をたたえ、またその志を引き継ぐため、2016年、旅にかかわる優れた著作を表彰する「斎藤茂太賞」を創設しました。
 2年目となる今回は、2016年に出版された紀行・旅行記、旅に関するエッセイ及びノンフィクション作品を対象とし、会員による数次の選考を経て、去る2017年5月29日(月)、下重暁子(作家)、椎名誠(作家)、芦原伸(紀行作家・SINRA編集長)、種村国夫(イラストレーター・エッセイスト)の4氏によって最終選考が行われ、同賞および審査員特別賞の2作品が選ばれました。授賞式は7月26日(水)、東京・内幸町の日本プレスセンター内のレストラン・アラスカで行われます。
◇第2回「斎藤茂太賞」受賞作
 今尾 恵介:著
『地図マニア 空想の旅』(集英社インターナショナル)
地図には手に持って土地を歩くという実用的役割と、その土地の昔の地形や地名などを調べるための資料的役割がある。世に出回っている「地図本」の多くは後者であり、地名や地形、土地の歴史などを地図から読み取って記述するものである。だが、地図研究家が地図から読み取るものはそうした情報だけではない。地図の中でも特に「地形図」は高度に記号化された存在で、熟練した読み手の脳内には鮮明な風景イメージが浮かび上がる。地図を見ながら同時に空想で旅ができてしまうのだ。

◇第2回「斎藤茂太賞」審査員特別賞
 村上大輔:著
『チベット 聖地の路地裏――八年のラサ滞在記』(法藏館)
著者は中国チベット自治区・ラサに住み、人類学者としてチベット各地にフィールドワークの研究旅行を続けていた。2008年、中国に対する抗議デモと暴動が起こる。当局による弾圧が強まる中で、聖地ラサの人々は何を考えてきたのか。報道されないラサの現状を、現地の人に最大限の配慮をしながら、リアルタイムでブログや新聞記事として公表してきたものを1冊にまとめた。チベットの民俗信仰や人々の精神性にできるだけリアルに近づこうとした労作である。
[審査員]
下重暁子(作家・日本旅行作家協会会長)
椎名誠(作家・日本旅行作家協会名誉会員)
芦原伸(紀行作家・SINRA編集長・日本旅行作家協会会員)
種村国夫(イラストレーター・エッセイスト・日本旅行作家協会会員)


[最終候補作]
宮城公博『外道クライマー』(集英社インターナショナル)
ヨシダナギ『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(扶桑社)
村上大輔『チベット 聖地の路地裏 ――八年のラサ滞在記』(法藏館)
今尾恵介『地図マニア 空想の旅』(集英社インターナショナル)
南谷真鈴『南谷真鈴 冒険の書』(山と渓谷社)
 
◆総評 下重暁子
今回の斎藤茂太賞に決定した『地図マニア 空想の旅』は、地図がもつ情報量の多さを再認識させられる作品である。地図を見るだけで、これだけ豊かな旅を表現できることを示してくれたことを高く評価したい。2016年は、地図ブームとも呼べる時代で地図や地形をテーマにしたものが多かったが、この作品はそれを象徴するものといえる。
『チベット 聖地の路地裏 ――八年のラサ滞在記』は、最近のチベットが現地の人々の日常生活の深いところまで踏み込んで書かれていて好感が持てた。また品格のある作品でもある。椎名審査員が特に推されたこともあって審査員特別賞となった。
今回の最終候補作品は非常に多彩で、斎藤茂太賞の位置づけをもう一度考えさせられたが、人のおもしろさ、すごさより、本として評価できるかに重点を置くことを再確認した。(談)

第1回(2016年)の受賞作品および授賞式のもようはこちら
 

[斎藤茂太プロフィール]
精神医学者として多大な社会貢献をしたほか、趣味の飛行機、汽車、船などの乗りもの愛好家としても知られ、生涯にわたって旅を続け、長らく日本旅行作家協会の創立会長をつとめてきた。
1916(大正5)年3月21日、歌人の斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。作家の北杜夫は弟、“窓際OL”の斎藤由香は姪にあたる。明治大学文学部を経て、旧制昭和医学専門学校(現在の昭和大学)を卒業。慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程にて医学博士号を取得する。精神科医として斎藤病院を経営する傍ら、飛行機、鉄道好きで知られ、作家の阿川弘之とともに“乗り物狂”を自称する。
1973(昭和48)年に日本旅行作家協会が結成されると、初代会長となり、地球規模の旅にいそしむ。長身で、恰幅よく、パーティー作法に長け、日本人でタキシードが一番似合う紳士として世界各国との親善に努めた。ほかに日本精神病院協会会長、アルコール健康医学協会会長、日本ペンクラブ理事などを歴任した。
著作は「茂吉の体臭」(岩波書店)、「モタさんの“言葉”」(講談社)、「精神科の待合室」(中央公論社)、「モタさんのヒコーキ談義」(旺文社)、「モタさんの世界のりもの狂走曲」(角川学芸出版)など多数。2006(平成18)年11月20日逝去。2016年は生誕100年、没後10年の節目の年にあたる。

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