第5回「斎藤茂太賞」決まる!

 一般社団法人日本旅行作家協会が主催する「斎藤茂太賞」の最終選考会が2020年7月10日(金)に行われ、第5回受賞作が決定しました。2019年に発表された紀行文、旅のエッセイ、ノンフィクションのジャンルから、一次選考で120編を選び、20数名の実行委員による数次の試読を経て、7月10日までに4編に絞りました。最終選考委員は1~4回の4人に、今回は三島由紀夫賞、芥川賞作家の大岡玲氏が加わり、5人によって選考が行われ、満場一致で受賞作が選ばれました。
 また、同時に「旅の良書2020」9冊も選出・発表されました。「旅の良書2020」は、斎藤茂太賞の選考過程でセレクトしたすべての作品を対象に、旅のもつさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出するもので、今年が2回目。なお、 授賞式は新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえたうえで、日時等は後日決定し、別途公表します。
第5回「斎藤茂太賞」
若菜晃子『旅の断片』
(アノニマ・スタジオ/KTC中央出版発行)
<著者プロフィール>
 1968年神戸市生まれ。学習院大学文学部国文学科卒業後、山と溪谷社に入社。『wandel』編集長、『山と溪谷』副編集長を経て独立。山や自然、旅に関する雑誌、書籍を編集、執筆。「街と山のあいだ」をテーマにした小冊子『murren』編集・発行人。
[選評]
下重 暁子 作家/日本旅行作家協会会長

 候補作品が送られてくると、まずはパラパラとページをめくって大まかに印象をつかみ、そのあと熟読するのだが、今回最初に手に取った3冊はどうもピンとこなかった。ところが、事情があってたまたま遅れて届いた1冊に目を見張った。「いいのがあったじゃない!」。それが『旅の断片』だ。コロナ禍の中で山荘に引き籠もり、じっくり読み進めていくと、ますますこの作品に引き込まれた。外国へ行って、珍しいものを見ようというのではなく、人々の普通の暮らしに目を向け、それを落ち着きのある優しい文章で綴っている。たとえば、とある街角。おばあさんが毎日毎日花に水をやっている。ただそれだけの風景が、なんと愛おしく心にしみることか。かつて、宮城県気仙沼市から渡った島で、一日中ひたすら牡蠣の殻をむいている人々の姿に、心底感動したことを思い出した。地に足のついた暮らし、なんでもない日常がいかに尊いものであるか、旅のスケッチ風のエッセイが、そのことを改めて感じさせてくれた。(談) 
最終選考委員の5氏。前列左から椎名誠氏、下重暁子氏、大岡玲氏、後列左が芦原伸氏、右が種村国夫氏
[最終選考委員]
下重暁子(作家・日本旅行作家協会会長)
椎名 誠(作家・日本旅行作家協会名誉会員)
大岡 玲(作家・東京経済大学教授)
芦原 伸(ノンフィクション作家・日本旅行作家協会専務理事)
種村国夫(イラストレーター・エッセイスト・日本旅行作家協会会員)






最終選考に残った4冊
[第5回「斎藤茂太賞」最終候補作]
■若菜晃子『旅の断片』(アノニマ・スタジオ/KTC中央出版)
■乙武洋匡『ただいま、日本』(扶桑社)
■坂田ミギー『旅がなければ死んでいた』(ベストセラーズ)
■岡本仁『また旅。』(京阪神エルマガジン社)

[旅の良書2020] (順不同)

■馬田草織『ムイト・ボン!ポルトガルを食べる旅』(産業編集センター)
家庭のキッチンから、街角のレストランまで、人生を変えるような味を求めてポルトガル各地を巡る“美味しい”が詰まった食と旅のエッセイ。
■吉田正仁『リヤカー引いてアフリカ縦断 時速5キロの歩き旅』(小学館)
時速5キロの旅だからこそ出会うことができた絶景、自然、そして優しい人達。リヤカーを引いて世界中で徒歩旅を続ける筆者の1年にわたるアフリカ大陸での珠玉のエピソード。
■梅宮創造『英国の街を歩く』(彩流社)
街歩きで耳目にふれる看板や人びとの声などの「街にあるメッセージ」を観察してみると、そこには英国文化ならではの驚きが。豊富な写真とともに「英語」を楽しむエッセイ。
■滝澤恭平『ハビタ・ランドスケープ』(木楽舎)
日本37地域を歩き、そこに棲む人々の風景からその土地の物語を読み解く。まちづくりの専門家である筆者が紡ぎ出す風土の物語。
■ナカムラクニオ『世界の本屋さんめぐり』(産業編集センター)
その国の本屋を訪れれば、その国がわかる! 旅先で本屋を訪れるという新しい楽しみ方を実践したブックカフェの店長による世界35ヵ国の本屋案内。
■芦原 伸『ラストカムイ 砂澤ビッキの木彫』(白水社)
北海道からカナダ、そして鎌倉へ。没後30年、今また見直される異能のアイヌ彫刻家 砂澤ビッキの生涯と足跡を辿る紀行ドキュメンタリー。
■乙武洋匡『ただいま、日本』(扶桑社)
日本を飛び出した著者が、電動車椅子で海外移住も視野に入れた世界一周の旅へ! LGBTQ、障害者、難民……。世界のマイノリティと触れ合い、あらたに見えた日本社会の姿とは。
■坂田ミギー『旅がなければ死んでいた』(ベストセラーズ)
失恋と過労で、心身ともに瀕死状態で出発した、アラサー・独身・彼氏なしの世界一周ひとり旅。行き詰まり・生きづらさを感じているすべての人を勇気づける奇跡の旅行記。
■岡本仁『また旅。』(京阪神エルマガジン社)
旅の時間だけがもたらすもの。密やかでスリリングな発見と出会いの連鎖。6年かけて、撮った・歩いた・食べた。「あたらしい日本地図」を描く『暮しの手帖』連載の旅エッセイ。