第7回「斎藤茂太賞」決まる!
一般社団法人日本旅行作家協会が主催する第7回「斎藤茂太賞」の最終選考会が2022年6月16日(木)に行われ、受賞作が決定しました。2021年に発表された紀行文、旅のエッセイ、ノンフィクションのジャンルから、一次選考で142編を選び、20数名の実行委員による数次の試読を経て、4月末までに4編に絞りました。最終選考には、下重暁子日本旅行作家協会会長をはじめ、作家の椎名誠氏、大岡玲氏、芦原伸日本旅行作家協会専務理事、種村国夫同協会常任理事の5人があたり、満場一致で受賞作が選ばれました。 また、同時に第4回「旅の良書」11冊も選出・発表されました。「旅の良書」は、斎藤茂太賞の選考過程でセレクトしたすべての作品を対象に、旅のもつさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出するものです。なお、 授賞式は7月27日(水)18時より、内幸町の日本プレスセンター10階のレストランアラスカで行います。 |
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[選評] 下重 暁子 作家/日本旅行作家協会会長 最終選考に残った4作品は、いずれも個性的で読みごたえがあった。中でも『ホームレス女子大生 川を下る inミシシッピ川』は、実体験した人でないとわからない、川とその周辺の様子が臨場感たっぷりに書き込まれていて、ぐいぐい引き込まれた。 『旅する少年』の黒川創氏は、初めての旅ものだそうだが、さすがに文章もうまく構成も確か。中学生のときにこんな旅をしたことにも驚かされる。ただ、すでに作家としての実績もあるプロの手による、いわば王道すぎる作品であり、むしろインパクトに欠けるように思う。 『戦争とバスタオル』は、男女2人の掛け合いやイラストも良い。ただ旅の最初の目的と結果が違ったものになってしまったことに疑問をもった。 『JK、インドで常識ぶっ壊される』は、高校生にしてはうまく書けていると思う。豊かな表現力にも驚かされた。惜しむらくは、若さと飛躍だけで書いていて、かみしめていない、消化不良気味なところが気になる。インドへ行くことになったのも、自分が興味をもったからではなく、たまたま父親の転勤によるものだったことも弱点といえる。 その点、近い世代でありながら、評価が大きく分かれるのが『ホームレス女子大生 川を下る inミシシッピ川』。川下りは自分の意思でやり始めたことであり、その行動は野性味にあふれ、たくましく、のびのびとしていて、心をわしづかみにされた。本のタイトルがちょっと違う気がするが、他の選考委員もこの作品に第7回斎藤茂太賞を贈ることに異議はなく、最後は満場一致で決まった。著者に早く会ってみたい。 |
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下重暁子(作家・日本旅行作家協会会長) 椎名 誠(作家・日本旅行作家協会名誉会員) 大岡 玲(作家・東京経済大学教授) 芦原 伸(ノンフィクション作家・日本旅行作家協会専務理事) 種村国夫(イラストレーター・エッセイスト・日本旅行作家協会常任理事)
■『JK、インドで常識ぶっ壊される』 熊谷はるか(河出書房新社) ■『ホームレス女子大生 川を下る inミシシッピ川』 佐藤ジョアナ玲子(報知新聞社) ■『旅する少年』 黒川創(春陽堂書店) ■『戦争とバスタオル』 安田浩一・金井真紀(亜紀書房) 第4回[旅の良書] (順不同) ■『真夏の刺身弁当 旅は道連れ世は情け』沢野ひとし(産業編集センター) ■『80歳、歩いて日本縦断』石川文洋(新日本出版社) ■『世界遺産 キリシタンの里 長崎・天草の信仰史をたずねる』本馬貞夫(九州大学出版会) ■『ぶらりユーラシア 列車を乗り継ぎ大陸横断、72歳ひとり旅』大木茂(現代書館) ■『観光の力 世界から愛される国、カナダ流のおもてなし』半藤将代(日経ナショナルジオグラフィック社) ■『花街の引力 東京の三業地、赤線跡を歩く』三浦展(清談社Publico) ■『旅がくれたもの』蔵前仁一(旅行人) ■『ポルトガル、西の果てまで』福間恵子(共和国) ■『JK、インドで常識ぶっ壊される』熊谷はるか(河出書房新社) ■『旅する少年』黒川創(春陽堂書店) ■『戦争とバスタオル』安田浩一・金井真紀(亜紀書房) |