第6回「斎藤茂太賞」決まる!

 一般社団法人日本旅行作家協会が主催する「斎藤茂太賞」の最終選考会が2021年7月8日(木)に行われ、第6回受賞作が決定しました。2020年に発表された紀行文、旅のエッセイ、ノンフィクションのジャンルから、一次選考で124編を選び、24名の実行委員による数次の試読を経て、3月17日までに3編に絞りました。最終選考は4人の委員によって行われ、下記の作品が選ばれました。
 また、同時に「旅の良書2021」8冊も選出・発表されました。「旅の良書2021」は、斎藤茂太賞の選考過程でセレクトしたすべての作品を対象に、旅のもつさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出するもので、今年が3回目。なお、 授賞式は新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえたうえで、日時等は後日決定し、別途公表します。
第6回「斎藤茂太賞」
山本高樹『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)

<著者プロフィール>
 著述家・編集者・写真家。1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックおよびザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。
[選評]
下重 暁子 作家/日本旅行作家協会会長

『0メートルの旅』は若い著者の才気を全体に感じて、一定の評価はできるものの、ブログ的な言葉の多用と感性的な表現が跳びはねすぎている点がマイナス、『もてなしとごちそう』は、過去に大きな賞をとった著者だけあって、さすがに文章には手だれを感じるが、エピソードの集積で読後の印象が薄くなっている点が弱い、とそれぞれ評価された。
『冬の旅』については、今回、欠席の椎名誠委員が書評で「おそろしく控えめなタイトルだが、実は非常に過酷な旅の記録。大げさな表現がないところに好感をもつ」と評しておられたが、私も同感で、淡々とした語り口、感情を抑えたさりげなさがとてもいいと思う。そして、いっしょに旅をしてくれた現地の2人の友人との人間関係が好ましく思われるのは、人がよく描けているからだろう。自分にとっては、どこどこのあの人に会いたいというのが、旅の最も大きなモチベーションになっているのだが、この著者も同じだと思う。
 欠点は言わずもがなの記述が多いことで、「最後の4ページ、帰国後の旅の述懐の部分はいらない」という大岡玲委員の見解には私も賛成。
 今回は、「人が描けている」ことが決め手となった。この点で他の2作品に比べで際立っているとともに、いわば旅行記の王道を行く最も重厚な本作品が、受賞作に選ばれる結果となった。(談) 
左から種村国夫氏、下重暁子氏、大岡玲氏、芦原伸氏(撮影:戸川覚)
[最終選考委員]
下重暁子(作家・日本旅行作家協会会長)
大岡 玲(作家・東京経済大学教授)
芦原 伸(ノンフィクション作家・日本旅行作家協会専務理事)
種村国夫(イラストレーター・エッセイスト・日本旅行作家協会会員)
椎名 誠(作家・日本旅行作家協会名誉会員)
※椎名氏は体調不良のため当日は欠席




[旅の良書2021] (順不同)
​​​■奥村忍『中国手仕事紀行』(青幻舎)
生活雑貨の店主である筆者が長年続ける、少数民族たちの民具の買い付けの旅の記録。ガイドブックも無いような中国奥地の知られざる魅力が詰まった一冊。
■斉藤政喜『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)
国内外で30年以上さまざまな場所の「歩く旅」を続けてきた筆者の集大成ともいえる1冊。アウトドア誌の人気連載から厳選されたさまざまな旅先でのエピソードを収録。
■梨木香歩『風と双眼鏡、膝掛け毛布』(筑摩書房)
地名を手掛かりにその土地の記憶をたどる旅へ。訪れた場所に生きる人や生き物の営みに触れ、想いを綴るユニークな紀行エッセイ集。
​​■谷釜尋徳『歩く江戸の旅人たち』(晃洋書房)
江戸時代、庶民に愛された「お伊勢参り」。総歩行距離2000キロ以上にもおよぶ「徒歩」の旅はどのようにして可能になったのかを紐解く。
■池田正孝『世界の児童文学をめぐる旅』(エクスナレッジ)
児童文学の舞台を訪れれば、その物語の持つ意味や作者の思いが見えてくる。40年以上にわたって海外児童文学の舞台を訪れた筆者の記録をまとめた1冊。
■川原真由美『山とあめ玉と絵具箱』(リトルモア)
イラストレーターでもある筆者が10年以上にわたり親しむ山の魅力を女性ならではの視点で多数のイラストと共に綴った全31篇のエッセイ集。
■中村安希『もてなしとごちそう』(大和書房)
旅先で出会った人からもてなされる料理にはその土地ならではの味わいがある。“もてなし”という世界の深さと広さとおいしさを知る一冊。
​​■岡田悠『0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語』(ダイヤモンド社)
Webメディアで人気の70か国を訪れた会社員兼ライターによる、南極の旅から始まり、家の中でのグーグルマップを使うエアロバイクの旅までの16の物語。