長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
「黒島の集落」(長崎県佐世保市) 2018年に文化遺産として登録 吉田美穂/文・写真

島のシンボルとして堂々としたたたずまいを見せる黒島天主堂
 2018年に世界文化遺産として登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。12の構成資産から成り、その1つが長崎県佐世保市「黒島の集落」だ。佐世保市相浦港発のフェリー「くろしま」が本土と繋がる唯一の交通手段。佐世保の景勝、九十九島に属する黒島は約50分で祈りの島に到着する。幕府の禁教令による厳しい弾圧から逃れ、開拓民として移住した黒島の潜伏キリシタンが紡いだ文化、歴史に触れることができる。
 現在の人口は約400人で、その約8割がカトリック。島には公共交通機関はない。周囲は約12㎞で、港には電動のレンタサイクルがあり、島を巡ることができる。予約すれば観光ガイドが案内してくれる。
 まずカトリックの集落である蕨(わらべ)地区へ。海から上がった場所に防風林に囲まれた家を建て見えにくくし、背後の斜面に畑を開墾している。蕨展望所は黒島のビュースポットで、晴れた日は長崎鼻の断崖、遠くは五島列島が見渡せる。
 次に、宣教師による最初のミサが開かれた場所「信仰復活の地」へ。碑が建立されており、信徒の存在を告げるため大浦天主堂を目指した出口家跡地に建つ。島のシンボル黒島天主堂は、島の中央にそびえ堂々としたその姿は圧巻。残念ながら現在は敷地に立ち入りできず、2021年3月末まで保存工事が続く。ロマネスク様式の建築、煉瓦造りで島の特産の御影石が多く使われている。祭壇の床には1800枚の有田焼の磁器タイルが敷き詰められている。1897年に着任したマルマン神父の設計で建設が始まり、信徒の献金と労働奉仕で約2年の歳月をかけ1902年に完成。見事な蝙蝠天井とステンドグラスが美しい。マルマン神父が資金集めで帰国の際に調達してきたステンドグラスやアンジュラスの鐘はフランス製だ。亡くなる1912年まで黒島で過ごしたマルマン神父は、今も信者たちと共に島の「カトリック共同墓地」に眠っている。
 伝統の食体験もできる。海水をにがりの代わりに使う「黒島豆腐」と、祭事に作る「ふくれ饅頭」づくりが体験できる。大豆の味が濃くずっしり重い黒島豆腐は市販の豆腐の4個分程。ふくれまんじゅうはサンキライの葉に乗せて蒸しあげる。民宿に予約すると「島めし」を用意してくれる。漁師が海水で炊いたのが始まりの「魚の塩炊き」や野菜の煮物、新鮮な刺身が並ぶお膳だ。島の食を味わい、潜伏キリシタンの想いに心を寄せる。佐世保への最終のフェリーは15時発。急ぎ足で巡れば佐世保へ当日に戻ることも可能だが、ゆっくり宿をとり、信仰を守るために黒島に移り住んだ潜伏キリシタンの想いを感じて、満天の星空を見るものおすすめだ。
正面から見る黒島天主堂 晴れた日には五島列島も見渡せる。 カトリック共同墓地にあるマルマン神父の墓