◆極楽いぶかしくば宇治のみ寺をうやまえ
 2011年4月16日(土)全国から180名が平等院に結集し、2つの世界遺産の講演、3カ所の特別拝観、4名の演奏家によるコンサートを開催しました。1053年に藤原頼道によって建立された鳳凰堂は、阿弥陀如来坐像の正面から日が昇り、頭上に日が沈むよう設計され、上から建物全体を見下ろすと、鳳凰が真東を向いて阿字池に羽を広げて羽ばたいているような配置です。阿弥陀如来坐像の左右の壁の上部には52体の雲中供養菩薩が掛けられ、屋根には平安の世に飛び立つといわれる一対の鳳凰が向かい合っています。「極楽いぶかしくば宇治のみ寺をうやまえ」という歌が示すように、鳳凰堂は平安時代から極楽浄土として表現された建造物で、世界遺産「古都京都の文化財」に登録されています。
▲平等院住職・神居文彰師
●講演1
 講演第1部は平等院神居文彰住職による『臨終と、日想観における生命思想』。人は死ぬ瞬間に何を求め、何をすべきかを学びました。「臨終を迎える側」も「看取る側」も死を迎える心構えが必要です。日本は「看取り」が組織化された国であり、「日想観」とは臨終を迎えるときの動作的・精神的対応の「深秘」とも「最要」とも伝えられます。落日の日輪を媒体とした瞑想法とは、日が沈んだあとに心に太陽を思い浮かべたり、雲で太陽が隠れたときに心の中で雲を拭ったりすることで、目を開けても閉じても観ることができるようです。平等院には仏を観るための経典『観無量寿経』が伝わっています。「初観」とは仏を観ること、つまり日没を観ることだそうです。「浄土に行ったことある人?」の質問に会場からはクスクスと笑いがこぼれましたが、浄土に行ったことがないからこそ、絵・彫刻・庭で表現します。鳳凰堂内の西面の扉には「日想観」の絵が現存しています。ある研究によると、日没を色濃く過ごした子どもは生命に対して真摯な態度をとるという結果がでたとか。「日想観」は頭で理解するのではなく、体験の中で感じることなのです。

▲東海大学の松本教授による『マヤの死生観』についての講演
●講演2
 東海大学観光学部長松本亮三教授による『中米 マヤの死生観』では、紀元前2000年から1697年まで続いたマヤ文明関連の7つの世界遺産のうち、600〜900年まで栄えた、太陽と月が没する西に位置するメキシコのパレンケについて学びました。パレンケの本来の地名はラカムハ(「大きな水」という意味)。マヤでは死者は太陽とともに、蓮に象徴される水中の冥界に赴くと考えられていました。また、王朝の紋章文字は骨で表現され、鹿の骸骨が太陽、兎の骸骨が月を表します。冬至の日に宮殿の塔から見ると、パカル王の墓の真上に日が沈むように設計されています。パカル王の墓の石棺には、亡くなったパカル王が鼻の頭に再生を表す骨をつけ、太陽神に乗り、世界の中心を表す木の軸に沿うように大地を表す怪物の口の中に沈んでいくレリーフがありますが、貴族たちが日没と再生をレリーフで表現したものだそうです。参加者でパレンケに行ったことのある人は4名だけでしたが、講演を通してマヤと平等院の類似性を垣間見ることができました。

●演奏会
 講演のあとは学芸員さんの解説付きで、非公開の浄閣の襖絵や茶室、鳳凰堂内部の九品来迎図や極楽浄土図、ミュージアム鳳翔館の「法然とその聖なる民俗」展覧会を特別拝観。続いて、鳳凰堂対岸で日没1時間前から『天地の響き ハープコンサート』が開催されました。ハープ・セラピストの中野智香子さんによる「アメージング・グレイス」が奏でられると、全員で黙祷。ディジュリドゥ奏者のKNOBさんは「般若心経」を唱え、アボリジニの聖なる楽器を響かせました。クリスタルボウル奏者のはら・まゆ魅さんが水晶でできたサラダボウル状の7つの楽器で「愛と平和の光」を演奏すると、体に波動が伝わりました。小鼓の望月一左さんの「次第」は鳳凰堂に心地よく響き、平安時代の奉納演奏を想像しました。満開の桜が華やかにもせつなく舞い散る中で、4名の共演による「さくら幻想曲」は見事でした。報道関係者も取材に駆けつけ、最終的には200名が「日想観」を体験し、ライトアップされた阿弥陀如来坐像に向かって被災地の復興を祈り、住職の挨拶で6時間半のイベントを閉会しました。凍えるほどの寒さに耐えながら演奏を聴く機会は滅多にないと思いますが、雪の降る被災地の避難所生活を想うと耐えられたという方もいらっしゃいました。この世に生かされている現実は喜びと同時に厳しさもあります。スピリチュアルな空間で、天災や人災に対する無念さをかみしめながらも、各自がやるべきことを再認識する機会となったのなら幸いです。参加費の一部は義援金として平等院から日本赤十字社を通して被災地に寄付されました。

▲満開のしだれ桜の下でハープ・セラピスト、中野智香子さんによる「アメージング・グレイス」の演奏で開幕 ▲ディジュリドゥ奏者KNOBさん(右)とクリスタルボウルのはら・まゆ魅さん(左)
▲途中から小鼓の望月一左さんも参加

▲演奏が終わるころ、完全に日が沈み、鳳凰堂がライトアップされた。
主催 宗教法人 平等院 一般社団法人 日本旅行作家協会
協賛 旭化成ホームズ(ヘーベルハウス) 実業之日本社ブルーガイド 協和海外旅行 日本プロポリス
 スポーツアカデミー TAKEMI BRIDAL 日本クリスタルボウル協会 プリンツインターナショナル 夢プロジェクト
後援 京都仏教会
協力 世界遺産検定 らくたび 特定非営利活動法人 ちきゅう市民クラブ

■講演と演奏会のダイジェスト版がDVDになりました。 税・送料込み1500円
ご希望の方は以下へお申し込みください。
連絡先 メール n_hosoda_worldheritage@yahoo.co.jp  細田尚子
振込先 三井住友銀行0009 新横浜支店322 普通620339 (ホソダナオコ)
口座名義:一般社団法人 日本旅行作家協会 世界遺産研究会 世話人 細田尚子

Copyright (C)2000〜2017, Japan Travel Writers' Organization