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斎藤茂太賞は、長年にわたり世界と日本の旅行文化の発展に貢献した当協会創立会長の故・斎藤茂太氏の功績をたたえ、その志を引き継ぐために2016年に創設しました。作品のジャンル&テーマは、紀行・旅行記、旅に関するエッセイ、ノンフィクション作品とし、これからの旅行文化にインパクトを与える斬新な書き手の発掘をめざしています。
今年で8回目となり、2022年に発表された著作の中から選出します。

設立宣言

 われわれはいま、空前の旅行時代に突入したことを知る。内外に行き交う旅行者の群れは、まさにホモ・モビリスの到来を告げ知らせている。しかし、現状をつぶさに観察するとき、われらは旅がいたずらに商業主義に毒され、劣悪低級な情報に荒らされ、文化としての旅が忘却され、平和と国際文化交流へのパスポートとしての旅が、かえって国際不信や誤解の種になり、偏見と憎悪をあおっている現状であるのを憂う。とくに、その歴史において、鎖国と孤立の時代を長く経験したわが国民は、ごく近年に至って、ようやく国際社会へ自由に参加できるようになったものの、未だその日浅く、孤立中培った文化、伝統、風俗、慣習の特殊性また根深く、容易に国際社会と馴染み得ず、多くの緊張と問題を残しつつ、今日に至っている。われわれはこのような中で、旅を何よりもまず文化としてとらえ、旅を通して生で歴史の意味を問い、政治、思想、宗教などにとらわれぬ姿勢と活動の中に、健全中正な国際理解と文化交流に資することを願う作家集団である。しかも、増大する旅行人口に比して、旅行作家がこの国において占める地位は、まことに小さく、かつ貧しい。われらは文化人としての自覚も新たに、旅という現代の文化現象を正しく捉えるペンマンシップを確立し、その地位を強固にし、もってわが国の旅行動態の向上、日本の対外イメージの改善、外国の旅行作家団体及び個人との交流などを計り、旅を通して広汎な国際文化活動を展開せんとするものである。