かながわ鉄道廃線紀行

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森川天喜著  神奈川新聞社 2024年10月刊

著者はフリーのジャーナリスト。旅行、鉄道、ホテル、都市開発などのジャンルで取材、執筆活動を行っている。本書は、今は失われた神奈川県内と一部静岡県、東京都の11の鉄道路線について、その沿革と歴史を調べ、現在の状況をルポしたもの。

労作という言葉が、これほどぴったりする本も少なかろう。もともとは神奈川新聞のニュースサイトに連載したものが大きな反響を呼び、書籍化にいたった。とにかく、よく調べていることにまず脱帽する。著者は様々な資料を渉猟し、写真を集め、人に会い、現地を取材して本書をまとめた。その労力は大変なものだ。なかなか採り上げられることのない鉄道もあり、後世に残すに足る貴重な本と言えよう。特に、豆相人車鉄道、ドリームランドモノレール、南武線貨物支線などの記事は興味深く読んだ。

タイトルから鉄道ノスタルジーものかと早合点しそうだが、敷設から廃止に至る経済・社会的背景を踏まえた記述になっているため、単なる「残念」「寂しい」だけのレベルを超えて読める作品となっている。実際に廃線跡を歩いて現状を調べたレポートは、読者も一緒に体験しているようにも感じさせてくれる。