シェルパ斉藤の還暦ヒッチハイク

斉藤政喜著 産業編集センター 2025年7月刊

著者は1961年生まれの紀行作家。歩く旅をレポートする紀行エッセイをアウトドア雑誌等に発表。著書も多く30冊を超える。本書はヒッチハイク歴40年以上になるベテラン旅人の著者が、還暦以後も続けているヒッチハイク旅の実態を報告。あわせて、過去に体験した思い出深いヒッチハイク旅の回顧と、ヒッチハイクを成功させるコツを伝えるもの。

ヒッチハイクといえば、若者の専売特許と考える人は少なくなかろう。評者も20代、30代ならともかく、還暦を過ぎたジイさんが道端で手を挙げて、止まってくれる奇特な車などないと思っていたが、本書を読むと意外にも多くの車が止まってくれる。もちろん、汚らしくて無愛想な高齢者では敬遠されるだろうが、本書の著者のように笑顔で清潔感があり、なおかつ所持品が少ない場合は、けっこう成功するようだ。もちろん、何時間かかってもダメなケースもあるが、その多くは交通量が少なかったり、適切な場所でなかったりすることが多いようだ。

だが、その根底には、やはり、日本の治安の良さがあるだろう。さらには、やはり世の中には「いい人」「親切な人」がまだこんなに沢山いるのかと、何かほっこりした気持ちになる。年齢も性別も仕事もバラバラだが、純粋な気持ちと好奇心からヒッチハイカーを乗せているドライバーがこんなにいるとは、まだまだ日本も捨てたものじゃない。とにかく人との出会いこそが、ヒッチハイクの旅の醍醐味であることがよく伝わってくる。文章は平易で読みやすく、著者の人柄もあって読後感はすこぶる良い。第3章の「攻略マニュアル」も、これからヒッチハイクに挑戦する人にはおおいに参考になろう。