
富川岳著 亜紀書房 2025年7月刊
著者は1987年新潟県生まれ。作家、プロデューサー。都内の広告会社に勤務したのち2016年に岩手県遠野市へ移住。民俗学をベースとした様々な創作活動や文化振興を行なう。2018年から郷土芸能「シシ踊り」に踊り手として傾注する日々を送っている。
著者は岩手県遠野市にふとしたきっかけから移住。地域活性化プロジェクトの事務局となって、それまで知らなかった柳田国男の『遠野物語』に出合い、その魅力に取り憑かれ、物語にも登場する郷土芸能「シシ踊り」を知り、傍観者からしだいに活動の中核になっていく。本書はその歩みを追った記録である。とにかく本書中にあふれる若き熱量に圧倒される。まったく縁のなかった土地に移住し、人との縁を作り、さらには郷土芸能の世界にどっぷりとはまる。一人の青年の成長物語とも読めるし、岩手県遠野市という地方都市に息づく文化や歴史の深さを感じさせてくれる読み物ともいえる。
特に強調したいのは、祭りや郷土芸能とは何かということ。一部を除き、ほとんどの地方の祭りや芸能は、地元の人間が無償で演じるものだ。遠い祖先や父母、祖父母から受け継ぎ、なぜ時間とエネルギーをそんなに投入して踊るのだろうか。本書を読み進むうちに、郷土芸能が、その土地とその土地に住む人々を結ぶ意味や存在意義が見えてくる。本書に描かれる「シシ踊り」の描写は圧巻であり、実物を見たくなってくる。読むのはなかなか大変な力作だが、読み終わった達成感は大きい。ユニークな本であり、ぜひ多くの人に読んでもらいたい一冊だ。
