テヘランのすてきな女

金井真紀著 晶文社 2024年6月刊

著者は1974年生まれのイラストレーター・文筆家。本書は、イスラム教の厳しい宗教規範の統制下にあるイランで女性がどのように生きているのか、その生の声を同性のイラストレーター&文筆家が多くの女性に取材してまとめたもの。テヘラン(とその周辺)に住む女性たちのインタビュー&スケッチ集。

イランの女性風俗で有名なのはスカーフだ。女性は外出する際にスカーフを着用して、髪を隠すことが強制される。戒律を強く守る女性はさらに黒いチャドルで目元だけを残して全身を被う。ファッションだけでなく、社会進出や男女交際にも厳しい規制がある。こうした抑圧に対して、2022年秋には「反スカーフデモ」も起きている。

著者は女性という立場を生かして、イランのさまざまな階層の女性に取材を行う。男性には絶対にできない取材だ。登場するイラン女性は多様。通訳、主婦、弁護士、エンジニア、絵師、タイル作家、看護師、女子サッカー監督、大学生、そしてトランスジェンダー女性まで。それぞれの話は興味深く、またイラン社会で生きる難しさを感じさせる。

忘れてならないのは、かつてのイランは1979年のホメイニ革命までは中東でも宗教的な規制は最も緩く、女性の社会進出やファンションもきわめて自由だったということ。その時代を知る人もまだ生きている。初めて知る話も多く、非常に有意義な一冊。