
スズキナオ著 太田出版 2024年8月刊
著者は1979年生まれのフリーライター。大阪在住。デビュー作『深夜高速バスに100回ぐらい乗って分ったこと』で注目すべき書き手として脚光を浴びた著者の初の旅エッセイ集。もとは太田出版のWEBマガジンに約2年にわたって連載されたもの。
テーマは「自分を捨てる旅」。「自分の存在をできるだけ透明にして、その場で感じることだけをじっくり見つめる」というスタイル。「暗くて静かな旅行記」をめざしたという。
だが、そのわりには、結構旅を楽しんでいる。
したがって、取り上げられる場所はあまりメジャーな所は少なく、著者が気になった場所がアトランダムに登場する。大阪の家から徒歩5分の旅館とか、泉佐野の犬鳴山温泉、JR西日本のサイコロ切符であたった米子市、岡山県西大寺の漁場・四ツ手網小屋、新快速の終点・滋賀県野洲市などなど、全く脈絡のない場所が次々登場する。そういう場所を旅する著者の語り口は、まさに脱力系というか、肩の力が抜けて、無駄話の連続のような趣だ。だが、それが著者の個性であり、読後感は悪くはない。新しいタイプの旅の書き手が現れたという感がある。