河合敦著 青春出版社 2024年4月刊
著者は歴史作家。テレビのコメンテーターとしても活躍する元高校教師。多摩大学客員教授。本書は、講演やテレビ取材などで地方へ旅行する機会の多い著者が、その合間に日本各地の歴史の舞台を訪ねるというエッセイ集。
登場する場所は、北から函館、新潟県村上市、東京、木曽、金沢、それに九州(長崎・佐賀・鹿児島)。さすがに歴史研究者だけあって、各地の歴史に関する造詣は深く、グルメや買い物をメインとする凡百の旅の本では見過ごしがちな名所旧跡を訪ね歩いている。
たとえば、函館では土方歳三と旧幕府軍の跡を追って松前から江差へ。「土方歳三嘆きの松」を見て、函館に戻って「土方歳三最期の地碑」を見に行く。歴史的な考証がしっかりしているので、読んでいて安心感がある。
新潟の村上では、幕末に幕府方で戦った村上藩家老・鳥居三十郎、木曽では名代官・山村蘇門のように、一般的には無名だが、当地ではよく知られる人物を取り上げるなど発見も多く、非常に勉強になる。手軽な新書ではあるものの、知られざる歴史の舞台を訪ねるという意味では優れた良書として評価したい。