種村実穂・文/戸川覚・写真
郵船クルーズ34年ぶりの新造客船
郵船クルーズ(株)としては34年ぶりの新造客船となる豪華客船「飛鳥Ⅲ」がドイツの造船所を離れ、今年の6月2日に母港の横浜港に到着しました。日本旅行作家協会クルーズ&トラベル研究会として就航前の船内見学を強く希望し、昨年から郵船クルーズ(株)に対して人脈なども頼って働きかけ、日本旅行作家協会として40名の招待枠をいただくことができました。
7月4日(金)の見学会には28名の会員の参加があり、12時から13時半まで、2班に分かれて見学をを行いました。まず取材したのは船の中心となるメインアトリウム「アスカプラザ&レセプション」です。金色に輝く壮大な漆芸作品が目を奪うアトリウムは3層吹き抜けの造りになっていて、全体として重厚で落ち着いた雰囲気が感じられました。


そのあとは、12階から順に下の階に移動する形で見学が進められました。12階、11階にはミニテニスコート、3対3のバスケットコート、ゴルフの打ちっぱなし、プール、フィットネスクラブがあり、長期のクルーズでも運動不足になる心配はなさそうです。

バリエーション豊富な客室
クルーズを楽しむ際、一番気になるのは部屋の様子でしょう。というわけで、9階にある最上級のロイヤルペントハウス(114.8㎡、定員4名)から、飛鳥Ⅲで初めて造られた船首側の部屋・キャプテンズスイート(87.1㎡)や、7階にあるこれも飛鳥Ⅲで初めて導入された一人用の部屋・ソロバルコニー(19.4㎡)などを見て回りました。ソロバルコニーは当船の目玉のひとつで、広さも十分にありマーケットのニーズにも合って、売れ行きも好調だそうです。ロイヤルペントハウスは最上級と形容するにふさわしく開放感と洗練された高級感があり、非の打ちどころがありません。船首側の部屋・キャプテンズスイートは船の最先端に位置するバルコニーから船が波を切って進んでいく実感と感動が味わえ、クルーズ好きにはたまらなく嬉しい部屋と言えるでしょう。もちろんすべての部屋がプライベートバルコニー付きです。


食事もクルーズの要となる大事な要素です。フレンチ、イタリアン、日本料理など、個性の違う6つのレストランから、自分好みの場所と時間、お料理を選べるシステムは、決められた時間に食事となる飛鳥Ⅱとは異なる新しい試みです。ドレスコードは基本「エレガントカジュアル」で、フォーマルナイトもありません。「クルーズの楽しみ方は自分で決める!」というのが飛鳥Ⅲのコンセプトなのだと思います。


船内それぞれの施設はゆとりを持って造られ、内装やファニチャーは落ち着いた色調で統一されています。また、随所に日本的な絵画や工芸作品が飾られ、“和”を意識した、大人の感性に訴える空間作りがされていると感じました。
飛鳥Ⅱが“洋”なら、飛鳥Ⅲは“和”を楽しむ客船と言えるでしょう。郵船クルーズは当分の間、2隻態勢でいくとのこと。選択肢が増えて、クルーズの楽しみも広がるに違いありません。
【客船データ 客室数381室、乗客数740名、船籍港・横浜、総トン数52,265GT】