女性の旅研究会 シンガポール取材レポート

種村実穂・文/大久保有満子写真

魅惑のプラナカン文化

2024年10月20日~24日

旅程を早く決めた恩恵

日本旅行作家協会の部門別グループである女性の旅研究会は、コロナ禍の時期を除いて、ほぼ毎年旅行を企画してきました。2024年はどこへ行こうかしらと1年前から議論した末に、行き先を10月のシンガポールと決め、約半年前の5月に航空券とホテルの手配を済ませました。ともにダイナミックプライシング(変動料金性)が導入されているため、予約を早く入れたおかげで直前の予約よりもはるかに安く旅することができました。ただ、半年後の予定は分からないという会員もいて、参加者は残念ながら3人になってしまいました。しかしながら、少人数だからこその足並みの良さと、意見の一致の速さで、旅行はとても内容の濃い、充実したものになりました。

アジアの熱気に圧倒される

今回の旅行は、シンガポール航空を利用し、ホテルは地下鉄東西線のラベンダー駅に直結しているVホテル・ラベンダーに泊まりました。初日の夜は、その地下鉄東西線に乗ってラッフルズプレイス駅に行き、駅から数分のラウパサ・ホーカーセンターというアジア地域の料理が何でもありの熱気ムンムンの屋根付き屋台街で夕食をとりました

アーバンリゾート気分を満喫

2日目は、午前中にガーデンズ・バイ・ザ・ベイに行き、自然と最先端技術が融合した植物園の魅力に触れ、午後はショップス・アット・マリナベイサンズで昼食とウィンドーショッピングを楽しみました。夜は都市ビール醸造所兼レストランとしては、世界でも高所にあるとされる「LeVeL33」のテラス席で夕食。マリナベイサンズを見下ろす景色の素晴らしさと、高所を吹き抜ける夜風の心地よさにすっかり酔いしれました。

旅のハイライト「プラナカン文化」に浸る

3日目は、今回の旅行のハイライトともいえる「プラナカン」に焦点を絞った探訪です。「プラナカン」とは、15世紀後半から数世紀にわたってマレーシアやシンガポールに移住した中華系移民の子孫を指します。彼らは現地の人々と結婚し、中国とマレー文化が混じり合った独自の文化や・生活スタイルを築き上げました。彼らの美意識が表現されたスタイルは「プラナカン様式」や「プラナカン文化」と呼ばれ、今でも建築物をはじめとしたシンガポールの日常風景に溶け込んでいます。

カトン地区にはそんな「プラナカン様式」のカラフルで瀟洒な住まいが建ち並び、ニョニャ料理(中華系プラナカン料理)と呼ばれる香辛料の効いた料理を提供するレストランがあります。「チリ・パディ」はニョニャ料理の有名店で、私たちはそこで昼食をとりました。カトン地区探訪後は、タクシーで移動して2008年に開館した「プラナカン博物館」へ。博物館にはプラナカンの人々の暮らしの中から生まれた美しい宝飾品、家具、テキスタイルなど、工芸品コレクションが展示されていて、プラナカンの人々の豊かな暮らしや高い美意識に触れることができました。

プラナカン文化を堪能した後は、地下鉄でチャイナタウンへ。駅近のショッピングモールで足裏マッサージの施術を受け、少し離れた庶民的中華料理屋「東北人家」で夕食。

さらなる民族多様性に触れる

4日目午前中は、アラブストリートの街の中心にあるサルタンモスクへ。シンガポールのイスラム男性と結婚した日本人女性のガイドさんから、イスラムの戒律やラマダンについていろいろお話を伺うことができて「なるほど!」と納得しました。アラブストリートを後にして、地下鉄で次はリトルインディアへ。煌びやかな結婚式用のサリーの店が軒を連ねるショッピングセンターを回遊したり、地元のカレー屋さんで昼食をしたり、インドパワーが炸裂するこの街を楽しみました。

今回は4泊5日の短い旅行でしたが、とても内容が濃かったと感じました。それは多民族国家と言われるシンガポールのいろいろな文化に触れることができたからでしょう。複数の民族が争うことなく共存し、それぞれの文化を守りながら、経済的発展も遂げているシンガポールという国の良さを改めて感じました。