JTWO Award
日本旅行作家協会賞

 著作、講演、メディア活動等を通じ、日本と世界の旅行文化の向上に貢献した人物や、旅行、探検、冒険等の行動で人々に夢や感動を与えた人物を顕彰するものです。

 日本旅行作家協会創立10周年の1983年に協会賞を創設。5年ごとの周年に実施の予定でしたが、15周年の1988年は昭和天皇のご病気に伴う自粛により翌年に延期し、1979年に第2回を実施。20周年の1993年に第3回、25周年の1998年は諸事情により延期となり翌1999年に第4回、30周年の2003年に第5回を実施。以後10年ごとの周年実施となり、40周年の2013年に第6回を実施、創立50周年の2023年に第7回の授賞式を開催の予定です。

 受賞者の選定は、事務局が候補者を理事会に推薦し、理事会の協議を経て受賞者を決定していましたが、第6回からは実行委員会が候補者を推薦、全会員の投票により決定、理事会が承認する形で受賞者を決定しています。

日本旅行作家協会賞受賞者

第1回(1983年)

戸塚文子(とつか・あやこ)

1913年~1997年、東京生まれ、日本女子大卒。編集者、紀行作家。女性として初めてジャパン・ツーリスト・ビューロー(現JTB)に入社。同社出版事業部に移り、雑誌『旅』の編集者として活躍する。1948年(昭和23年)、女性初の編集長となり世界各国の旅行情報を読者へ紹介した。1957年(昭和32年)には松本清張の『点と線』を『旅』に掲載し、推理小説ブームのきっかけを作った。1961年(昭和36年)に退社して、フリーとなり、世界各国に旅の軌跡を残し、紀行文を執筆。独身で美貌のキャリア・ウーマンの元祖、戦後の女性の社会進出の草分け的存在となる。

第2回(1989年)

兼高かおる(かねたか・かおる)

1928年~2019年。神戸市生まれ。香蘭女学校卒業後、ロサンゼルス市立大学に留学。ジャーナリスト、トラベルライター。「ジャパン・タイムズ」などのフリーランス記者として活躍。1959年から1990年まで『兼高かおる世界の旅』(TBS系)でナレーター、ディレクター兼プロデューサーとなる。取材国は約150か国、距離にして地球を180周した。海外旅行が珍しかった時代、世界の国の魅力をお茶の間に紹介し、のちの海外旅行ブームの仕掛け人となった。好奇心旺盛でアフリカの未開地への取材やジョン・F・ケネディとのインタビューで知られる。1958年、スカンジナビア航空が主催した「世界早回り」に挑戦し、73時間9分35秒の新記録(当時)を樹立した。2007年~2011年、日本旅行作家協会の会長を務める。

第3回(1993年)

宮脇俊三(みやわき・しゅんぞう)

1926年~2003年。東京生まれ。東京大学卒業。編集者、紀行作家。中央公論社で編集者として活躍し、北杜夫など多くの作家を世に送り出した。退職後は紀行作家となり、好きな鉄道旅行に勤しむ。1978年、『時刻表2万キロ』で日本ノンフィクション賞(角川文化振興財団主催)を受賞し、作家として認められる。鉄道ファンながらも歴史や風土に裏打ちされた紀行文を得意とし、汽車旅は世界の果てまでに及んだ。それまで撮影や模型に限られていた鉄道趣味の分野を広げ、いわゆる“乗りテツ”を誕生させ、鉄道旅行の楽しみ、紀行文の魅力を一般に知らしめた。

第4回(1999年)

森本哲郎(もりもと・てつろう)

1925年~2014年。東京生まれ。東京大学卒業。ジャーナリスト、評論家。東京新聞、朝日新聞に在籍、特派員として世界各地を回った。その経験を経て評論活動に転出し、世界の文明、滅びゆく文化への詩情、哀惜などを世に訴えた。豊富な旅行体験に裏付けられたユニークな比較文化的考察が注目された。『文明の旅』(1967年)などの旅に関する著作のほか、『ことばへの旅』(1973年)などの著述も多い。東京女子大学教授などを歴任した。

第5回(2003年)

三浦雄一郎(みうら・ゆういちろう)

1932~。青森市生まれ。北海道大学卒業。プロスキーヤー、冒険家、獣医師。1960年代にスキー学校を開設。1962年にアメリカで開催された世界プロスキー選手権に参加し、世界ランク8位となる。1964年、イタリアで開催されたキロメーターランセ(急勾配の斜面を滑り降り時速を競う)大会に日本人で初めて参加、時速172.084キロの世界新記録を樹立した。1966年、富士山での直滑降を成功させ、この時ブレーキとしてパラシュートを使用したことから後にパラグライダーが開発される。1970年にはエベレストの8000m地点からの滑降、1985年、54歳で南アメリカ大陸最高峰アコンカグアからの滑降、世界七大陸最高峰全峰からの滑降を成功させた。スキー登山、滑降を通して、人間の素晴らしさ、冒険の魅力を大衆に伝えた。90歳を超してもなおモンブラン氷河滑降の挑戦を続けた実父やオリンピックに出場した次男らスキー、冒険に夢をかける新しい日本人家族像を体現している。

第6回(2013年)

椎名誠(しいな・まこと)

1944年~。東京生まれ。東京写真大学中退。作家、写真家、映画監督。1966年、デパートニューズ社に入社。デパート業界を対象とした業界誌『調査月報』の編集に携わる。のちに同社発行の『ストアーズレポート』の編集長に就任。その後フリーとなり、1976年、『本の雑誌』を発行。1979年、『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。“昭和軽薄体”と称された独特の文体、大胆な表現で、たちまち文壇の注目を集める。日本各地、世界の辺境へと好奇心の赴くまま頻繁に足を運び、紀行作家、旅行家としても活躍する。1989年、『犬の系譜』で第10回吉川英治文学新人賞受賞。1990年、『アド・バード』で第11回日本SF大賞受賞。代表作に『あやしい探検隊』シリーズ、家族をモデルとした『岳物語』など。

第7回(2023年)

池澤夏樹(いけざわ・なつき)

1945年、北海道生まれ、東京育ち。埼玉大学理工学中退。小説家、詩人、翻訳家。30歳代のギリシャからはじまり沖縄、フランス、札幌、信州と居住地を転じながら創作活動を続ける。1984 年、『夏の朝の成層圏』で長篇小説デビュー。1987年発表の『スティル・ライフ』で第98回芥川賞を受賞。その後の作品に『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『楽しい終末』(伊藤整文学賞)、『静かな大地』(親鸞賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)などがある。編集者としても、池澤夏樹=個人編集『 世界文学全集』、『日本文学全集』(各30巻)があり、地球、自然、旅を基軸に幅広い文芸活動をしている。