
フウ著 産業編集センター 2025年6月刊
本書は、ネットで偶然見つけた中東の本屋に「住み込みで働かせてください」と直訴し、たった2文字の返信「OK」で海を越えた若い日本人の行動力と好奇心が疾走する滞在記である。
到着後に出会うのは、多国籍店員、奔放な店長、異文化の生活リズム、そして癖強めの日常。序盤は旅エッセイの定型をなぞるが、読み進むほど現地で働く者の視点が鮮明となり、イスラム圏の日常、台所の混沌、価値観の衝突、クッキー作りに象徴される「仕事は自分で終わらせろ」という文化的筋力が物語を押し広げる。と書いてしまうと少し真面目すぎるかもしれない。文章はどこか自由で、臨場感に満ち、読者は“住む側”として初めて中東のリズムに触れる。働く、食べる、交わるという生活単位が、異文化摩擦と友情の細部を丁寧に浮かび上がらせ、若さ特有の即興性が文章に軽やかな推進力を与えている。
写真やnote連動による拡張性も魅力で、タイトルの気軽さに反し、中東経験者の証言としても読みごたえがある。異国を「観光」ではなく「呼吸」として受け止めた稀有な一冊ではないか? 私もこんな風な旅をしてみたかったとつくづく思わせる一冊である。
