世界の食卓から社会が見える

岡根谷実里著 大和書房 2023年4月刊

著者は1989年生まれ。世界の台所探検家。東京大学大学院工学系研究科修士修了。クックパッド入社後、独立。クックパッドは世界70カ国以上に展開する料理レシピサービス。世界各地の家庭を訪れて滞在し、一緒に料理をしながら料理から見える社会や暮らしを講演・執筆・研究する。全国の小中高校への出張授業も実施。訪問国・地域は60以上。今は北欧圏を回っている様子をSNSで知ることができる。

文章はとてもわかりやすく、ムダがなく論理的。頭の良い人の文章だと思う。食を通して、政治・宗教・地球環境・食料需給・気候・伝統食と偏見・民族紛争などを語る。本当に多岐にわたり、少々多すぎる気がしないでもない。けれども、それだけ食に関する好奇心・知見・経験が豊富なのだと思われる。

例えば、フィンランドでは、小学低学年の女の子が母親がパンケーキ生地を作っている隣で、自分なりの考えでパンケーキ生地を作っている。母親は手出しをしない。そこから世界の教育レベルの分析が始まる。表や図をふんだんに盛り込んで、とてもわかりやすい。パレスチナのオリーブの木についてのエッセーなど読みこたえがある。

本書の前半は、やや肩に力が入っていたのか、宗教による食の制約など微に入り細に入りすぎているような感じもするが、だんだん筆も乗ってきて、途中に入るコラムでも著者の思いや思考がよく伝わってきて興味はつきない。これから著者がどんな活躍をしていくのか、とても楽しみに思える良書。