
松本隼士著 雷鳥社 2025年3月刊
著者は石川県金沢市の生まれ。40代前半で、現在は富山に暮らす。大学卒業後、海洋地球研究船の乗船技術者として世界各地の海洋観測に従事し、その後、大気観測の技術者を経て、南極地域観測隊の夏隊、越冬隊、東京海洋大学の南大洋航海に参加した経歴を持つ。本書は著者が北極圏のスヴァールバル諸島(ノルウエー領)にあるニーオルスンという小さな町に2019年から2022年までの間、断続的に滞在して観測生活を送った日々の日記風記録である。
ニーオルスンは国際観測拠点として各国が基地を置き、日本の観測基地もある。世界中から観測者、研究者がやってくるところで、苛酷な観測基地である一方、夏になるとクルーズ船がやってきて観光地となる側面もある。とはいえ、ホッキョクグマに出会ったときに備えて、屋外に出る時はライフルを携行せねばならないとう僻遠の地だ。オーロラが天を飾る空の下で、外国の滞在員と生活しながら、研究観測に従事した日々が語られる。自然も人との出会いも文字どおり一期一会で、自然を描写し、外国の観測者・研究者との交流を綴る抒情的な文章の中に、さりげなく無常観が漂う。極地ならではのことかもしれない。本書に収録されている写真は、長期滞在者でなければ撮れない、北極の夢幻的な美しさが際立っている。
