ロバのスーコと旅をする

高田晃太郎著 河出書房新社 2023年7月刊

著者は1989年生まれ、北海道大学文学部卒、北海道新聞・十勝毎日新聞で記者をし、サンチアゴ・デ・コンポステーラへの「巡礼の道」を歩き、“歩く旅”に魅了される。以前モロッコでロバを連れて旅をしたことがあり、2022年に10カ月かけてイラン・トルコ・モロッコでのロバを連れての徒歩旅行を決意し、敢行した記録が本書である。

それぞれの国でまずはロバを手に入れるところから始まり、そのロバとひたすら歩く。当然のことながら怪しまれ、特に著者が日本人に見えずアフガン人と間違われることが多く、あわや旅行を中止して強制送還かとヒヤリとする場面が何度もある。

もちろん、泥棒やら怪しげな輩にまとわりつかれることも多い。一方で親切にしてくれる人も多い。現地の国際情勢なども見て取れる。

何かをやってのけようという強い意志は著者にはないようで、ただゆるりとロバとどこまでも歩いて行きたい気持ちに従っているようだ。平易な文章ではあるが、記者だっただけあり、読ませる文章である。読み進むうちに、物悲しげでちょっとおバカな風貌のロバが読み手の心の中にすっかり入り込み、かけがえのないパートナーに感じられるようになる。

同じような旅は多くの読者には不可能であるからこそ、旅心をくすぐる。数は多くはないが写真も美しく、文章もユーモアがあり良質。