世界遺産委員会レポート(2021年)

世界遺産委員会は、2年に1度開催される定期会合で、世界遺産の登録・管理に関する重要な決定が行われます。

新型コロナウイルス感染症の世界的なまん延により、2020年に中華人民共和国福州市で開催が予定されていた第44回世界遺産委員会拡大会合は世界遺産条約史上初めて延期となり、2021年7月16日から7月31日までに2年分の審議案件をまとめてオンラインで開催されました。

その際、第45回世界遺産委員会の開催国、議長国にはロシア連邦が立候補し、ロシア連邦・タタールスタン共和国の首都カザンでの開催が予定されていました。しかし、2022年2月24日にロシアはウクライナに侵攻しました。4月13日に終了した第214回ユネスコ総会において、ロシアによるジェノサイドが明らかになり、かつてソビエト連邦を構成していたリトアニアのユネスコ大使が開催地変更を公式に要求したことを皮切りに、多数の国が賛同し、「ユネスコ世界遺産条約46ヶ国からの公開書簡」をイギリスが代表して公開書簡として公表し、オードレ・アズレユネスコ事務局長が調停役となり、直ちに委員会開催についての調整が水面下で進められました。2022年11月22日にロシアが開催を断念しました。

開催日程および開催地の変更はこれまでにも、中国の蘇州市で開催予定だった2003年の第27回世界遺産委員会がSARSの影響で、バーレーンのマナーマで開催予定だった2011年の第35回世界遺産委員会がバーレーン騒乱により中止となり、ユネスコ本部で開催されたことがありました。