ドイツ 1999年に文化遺産として登録
野田 隆/文・写真
首都ベルリンにある世界遺産は、都心を流れるシュプレー川の中州に集まっている5つの博物館・美術館で「博物館島」と呼ばれている。
フリードリッヒ・シュトラーセ(通り)駅から東へ歩いていくと数分でシュプレー河畔に出る。目の前には大きなミュージアムが並んでいて、その間をDBの線路が走るという興味深い造りだ。正面に見えるのが、一番有名なペルガモン博物館。線路の向こうの建物はボーデ博物館といって、ドームのある建物が印象的だ。線路のガード下をくぐってペルガモン博物館に戻るが、その間にも線路上を高速列車ICEや赤い二階建ての普通列車、それに近郊電車Sバーンがひっきりなしに通過して鉄道ファンとしては落ち着かない。
ペルガモン博物館へはシュプレー川に架かる橋が入り口になっている。両側に神殿風の建物が聳える広場を進むと、その前に立ちはだかるのが入り口のある建物だ。この博物館は、今のトルコあたりで発掘された古代遺跡の復元展示で世界的に有名なのだ。まずは、堂々たる「ゼウスの大祭壇」から見学だが、このような巨大遺跡が屋内に展示されているのが驚きだ。実際に石段を登ってみるとその大きさが実感できる。祭壇の右手に進んでミレトスの市場門をくぐると、バビロンのイシュタール門があるというので探すが分からない。係の人に訊ねると後ろを振りかえろと言われた。なるほど市場門の反対側が別の造りになっている。鮮やかな青い色に塗られ、ぎっしりとライオンやよく分からない四足動物の姿が描かれている異色の門だ。さらに続く行列通りも天井近くの壁がイシュタール門と同様の図柄の青いもので目を見張る。
左手の建物の中はギャラリーになっていて、様々な彫刻が陳列されている。のんびり眺めていくと列車の走る響きがするので、音のする方向を見ると窓があり、そこから列車が眺められる。こんなミュージアムは初めてだ。
ゆっくり休憩後、橋を渡って外に出て、他のミュージアムを見て回った。旧博物館の裏手で、川沿いに建つギリシャ神殿のような建物が旧ナショナル・ギャラリーだ。メインは、シンケル、メンツェルといったドイツ語圏の画家の作品で私にはあまりなじみがないものばかりだ。それでもメンツェルの「サンスーシー宮殿におけるフリードリッヒ大王のフルート演奏会」という絵は、次の日訪れる予定の場所だったので印象に残った。マックス・リーバーマンという画家の作品もある。実はこの名前、東西ドイツが再統一された際にベルリンとハンブルクを結ぶ列車名として記憶していたものだ。この日まで画家の名前とはうかつにも知らなかった。こうしたギャラリーのところどころに、唐突にマネだのセザンヌだのの作品が飾ってあるのが面白かった。ここも線路際のミュジアムで、「博物館島」は、鉄道ファンにとっては嬉しいやら気が散るやらの何とも言えないロケーションだ。
◇拙著『列車で巡るドイツ一周世界遺産の旅』「第3章 ベルリンが誇る博物館の島とポツダムの宮殿群」より