オーストラリア 1987年自然遺産、1994年に文化遺産として拡大登録
片山邦夫/文・写真
南緯25度19分、東経131度01分、大きな一枚岩は、その存在を誇るかのように、見渡す限りの草原と灌木の乾ききった大地に、風の声を聞きながら横たわっている。
360度の大自然と、地球の原始を彷彿させるようなマイ・フェイバレート・プレイスと言えば、そう!誰もがご存知の「エアーズロック」です。
「エアーズロック」と言う名称は、イギリスの冒険家が発見したときの総督の名前で、現地では「ウルル」と呼ばれ、高さ335m、周囲約9.4kmの岩塊は、もともと8000m級の山脈でした。それが長年の風雨の浸食を受け、次に地殻変動によって地層が大きく傾き、現在に至っています。
「エアーズロック」というと、すぐに「登山」がピンときますが、数年前には登山の中止が検討されました。
①アボリジニーの聖地であり、宗教上の配慮から望ましくない。
②観光登山という割には安全整備に限界があり、毎年死亡事故が発生している。
③代替え案として、横にタワーを建設してその上から観光するなどの案もでましたが、現実的ではなく、かえって景観を損ねてしまうこと。
④何よりも、大きな観光収入の減になり、それはアボリジニーの収入源にも影響することなどで、基本的には気候や祭事の条件付きで許可されています。
以前は、まれに降る雨の日(岩山のため雨が降るスリップしやすい)や、強風の日(周囲に何もないので頂上の風の力が強い、風で物が飛ばされ拾いに行こうとして事故に)を除けば、登山の許可が出ていたので、1泊滞在でもほぼ登頂できる状況でしたが、数年前から細かい気象条件が設定され、現在では一年のうちの半分も登れない状態だと現地スタッフから聞きました。旅行会社も過度に期待を持たせるような「登頂」いう言葉の利用を極力さけ、私も3回トライして1度しか行けていません。直近の2013年も、ホテルエリアでは風もほとんどなく、登り口までバスで向かうと、そこには「山頂強風につき本日は登山禁止」の看板が!
アボリジニーに配慮して、できる限り登山させないのかな? 疑ってしまいました。またそこには、3日間続けてトライしたドイツ人の夫婦もいました。でも、登れなくたって魅力は十分。サンライズ&サンセット時の岩肌が、茶色、赤色、オレンジ色、紫色、灰色など時々刻々と変化する様子には、呼吸を忘れて見入ってしまいます。
日没後、満天の星の下で南十字星を見上げての夕食も得難いものです。
ぜひ一度。
雨上がりの山頂にて 八重野充弘
1984年1月、オーストラリア各地で3週間にわたり野生動物の取材をしていたとき、この地に立ち寄りました。アリススプリングスでキャンピングカーを調達し、470㎞を走らせて到達。現地の自然保護官のボスの奥さんが日本人だったこともあり、じつに親切に我々の仕事のサポートをしてくれました。今では考えられないことですが、特別の許可をもらい、保護官のオフィスのあるエアーズロックの麓で、2晩キャンプしました。夜は満天の星空。目覚めると、朝日に照らされた茶褐色の岩山が、覆いかぶさるようにそびえていました。珍しく、まとまった量の雨が降ったあとで、山頂にも、途中のくぼみにも水たまりがあり、カブトエビが泳いでいました。水のあるときだけ孵化し、乾燥すると耐久卵で過ごす珍しい生き物です。草むらではハリモグラを、10数㎞離れたMt.オルガでは野生の犬ディンゴの群れを見ました。幸運に恵まれた取材だったので、すべてが鮮明に記憶に残っています。