ザンビア/ジンバブエ 1989年に自然遺産として登録
鈴木一吉/文・写真
アフリカが暗黒大陸と呼ばれていた時代に、スコットランド人宣教師で、探検家と医師でもあったデイビッド・リビングストンは、布教先のルアンダからザンベジ川沿いに帰路を辿る途上、土地の人々がモシ・オ・トゥニャ(Mosi-Oa-Tunya )と呼び、“雷鳴の轟く水煙”を意味する大瀑布を見つけ、当時のイギリス女王ヴィクトリアと大瀑布の荘厳な景観に敬意を示して〈ヴィクトリアの滝〉と名付けた。1855年11月17日のことであった。
彼は、その後に白ナイル川の水源を探したことでも知られているが、また、アフリカの奴隷解放に力を尽くしながら、布教と探検を続けたことも忘れてはならない。
ザンビアとジンバブエの国境に挟まれて位置するヴィクトリアの滝は、ザンビアでの呼び名も併記され、〈モシ・オ・トゥニャ/ヴィクトリアの滝〉としてユネスコ世界自然遺産に登録された。
滝の全幅は約1.7㎞で、その大部分の北1.2㎞がザンビア側、残りの南0.5㎞がジンバブエ側に属している。私の訪れた9月下旬は乾季の終わりに近く、滝から立つ水飛の霧で虹ができるものの、雷鳴が轟くほどとは感じない穏やかな滝の落下たっだ。
しかし、ジンバブエ人ガイドの説明によると、滝の水煙は11月~4月の雨期には400~800mにまでも昇るといわれ、その水煙の高さは乾季の10倍にもなるために、数10㎞も離れた場所からも水煙が見られるそうだ。
滝がある玄武岩の台地は、1億8000万年前の火山活動でできたが、現在の滝の上流周辺は広大な平原地域になっていて、ザンビア政府の公式ホームページによると、この地域にはアフリカ南部の25%に当たる水源があり、多くの野生動物や鳥類がいる。また、ザンビアの南に位置する国、ボツワナのチョベ国立公園は、現在もアフリカゾウの最大の生息地といわれている。
滝の観光は、ザンビア側からは、モシ・オ・トゥニャ国立公園の入り口から、滝の上流側の自然探索を楽しみながら。5月~10月の乾季ならば、川の浅瀬にまで歩いて行くこともできるという。また、対岸のジンバブエ側からは、滝の下流側に位置するヴィクトリアフォールズ国立公園の入り口から。公園内の水煙の立ちこめる林の間からは、虹が架かった滝の景観を楽しみながら散策ができる。
ところで、この滝には、〈悪魔のプール〉デビルズプール(Devil’s Pool)と呼ぶ、乾季に滝の西端側の川の浅瀬を泳いで滝の落下を見下ろすという、ロイヤル・リビングストン・ホテル主催のツアーや、第2渓谷を挟んで両国の国境に架かるヴィクトリアフォールズ橋の橋上から、約110m落下を体験するバンジージャンプもある。また、こうした危険を伴うものではなく、老若男女どんな旅行者でも楽しめて、お薦めなのが、上空から滝の全貌を見下ろすヘリコプターでの遊覧だ。
(写真は2007年に撮影)