チェコ 1998年に文化遺産として登録
沖島博美/文・写真
プラハに次ぐチェコ第2の都市ブルノから、バスで東へ約1時間15分。モラヴィア地方のズリーン州にある古都クロムニェジーシュは、12世紀にオロモウツの司教ヨハネス二世が建設した町だ。プラハから遠く離れているにもかかわらず、外国人観光客が訪れるのは、この町には世界遺産に登録されている城と庭園があるからだ。
町の中心は長方形のフェルケー広場。広場を取り囲む建物にはアーケードが付いている。雨の日でも傘をささずに買い物ができ、真夏の暑い日は日よけの役目を果たして涼しい。その広場の角に、目指すクロムニェジーシュ城の塔が見える。町の中に最初の城が築かれたのは12世紀のことだが、背後を流れる小川を水堀に利用して、15世紀末にゴシック様式の城が築かれた。17世紀前半の30年戦争が終結すると、城の大改築が行われて、バロック様式に変わる。18世紀半ばの火災の後、内部のホールや図書館などが豪華に改築されて今日の姿になった。
内部はガイドツアーで見学が可能。映画『アマデウス』の撮影もこの城の中で行われており、華やかな部屋が次々と現れる。城内最大の見どころはギャラリーで、クラナハやティツィアーノなど、プラハの国立美術館に次ぐ重要な絵画コレクションを誇っている。1949年まで、城はオロモウツ大司教が所有していたが、現在は国が管理。1998年に城と庭園が世界遺産に登録された。
城の背後には広大なイギリス庭園が広がっている。かつて城を守っていた水堀は、形を変えて池や小川になって、自然の景観をつくり出している。動物も飼われているが、孔雀などは放し飼いにされ、自由に庭園を歩き回っていた。城庭園は47ヘクタールと非常に広いので、全てを散策するのはとても無理。ほどほど楽しんだら、今度はフラワーガーデンへ行ってみよう。
フラワーガーデンは城と離れており、フェルケー広場を挟んで反対方向、旧市街の西側にある。庭園入り口から右手の方はフランス庭園、左手の方には花壇や生垣の迷路、温室などがある。フランス庭園は目を見張るような美しさだ。ロトゥンダと呼ばれる円形建物が、フランス庭園の中央にあり、天井に描かれたフレスコ画が美しい。一番端にコロナード(回廊)が建てられ、上はテラスになって上がることができる。テラスからの庭園の眺めは最高だ。幾何学模様もここから眺めるとよく判る。非常に手入れが良く、常に庭師があちらこちらで働いている。彼らがさばくハサミの音が心地良く庭園に響いていた。