アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群

フランス 1981年に文化遺産として登録、2006年に登録名称変更  

中村浩美/文・写真

 フランス東南部、プロヴァンスを代表する都市アルル。パリ・リヨン駅からTGVでアヴィニョンまで約4時間、そこから在来線で約20分の行程だ。古代ローマ時代にはプロヴァンス屈指の大都市として繁栄したことから、市内に円形闘技場、古代(野外)劇場、地下回廊とフォルムコンスタンティヌスの浴場、ローマの城壁、アリスカン(大墓地)など当時の遺跡が残る。これらがすべて世界遺産の対象だ。

 円形闘技場がやはり最も印象的だった。1世紀末ごろの建造で、ローマのコロセウムより100年も古いという。3層構造で2万人を収容できたというが、現存するのは2層のみ。後世に石材が略奪され、最上層は消滅したのだという。136m×107mの長円形の巨大闘技場だ。訪れた当時は、闘牛場としても使われていた。プロヴァンスの西隣ラングドックのニームにもローマ遺跡が残っており、円形闘技場もある。規模はアルルのほうが少し大きいが(ニームの闘技場は133m×101m)、保存状態はニームのほうがはるかに良い(世界一の保存状態とか)。アルルを訪れたら、ニームにもぜひ足を延ばしたい。個人的には、アルルよりもニームに魅力を感じた。アルルの滞在ならシャトー・ホテルのユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)、ニームならオテル・エンペラトール(皇帝)がお薦め。どちらもローマ時代を偲ばせる名前のホテルだった。
 世界遺産の登録は1981年で、上記の古代ローマ遺跡・遺構と、ロマネスク期の教会が対象。オベリスクと噴水のあるレピュブリック広場に面して建つ市庁舎も、建物としては興味深い。正面のファサードは完璧な古典主義様式で、第2期ルイ14世様式に属するという。その向かいにあるのがサン・トロフィーム教会で、これが世界遺産の対象となったロマネスク建築だ。11世紀から12世紀にオリジナルが造られ、その後改築されて現在の形になった。ポルタイユ(正面入口)が、ロマネスク様式の傑作の一つと称えられている。美しい彫刻と円柱で飾られていた。アルルを訪れたのは1995年5月で、写真はすべて当時の撮影。

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中村浩美