マントヴァとサッビオネータ

イタリア 2008年に文化遺産として登録  

宮澤乃里子/文・写真

 ミラノから電車で2時間ほど、三方を湖に囲まれた街、マントヴァ。ルネッサンス期の理念に基づいた都市計画の例として、少し離れたザッピオネータと共に2008年に世界遺産に登録された。
 何世紀にもわたり、改革を重ねて、芸術の花を咲かせた街は、今も美しい建物とその内部装飾で、旅人を楽しませている。特にゴンザーガ家やイザベラ・デステが芸術を愛したことが知られていて、たくさんの芸術家が、この街に作品を残している。
 旧市街全体が、古き良き時代の香りがする。香りというより匂い。何の匂いかわからないが、この街には、本当に独特の匂いがある。旧市街は、歩くのにちょうどいい広さの中に歴史的建物が集中していて、団体客が、並んで歩く姿が目立つ。ドゥカーレ宮殿は、威厳のある建物で、様々な装飾の部屋は素晴らしい。彫刻に見えるだまし絵や壁画も面白い。団体客が多く、別々の言語の案内人の声が重なり、なかなか自由に歩けなかった。案内所には日本語の地図も置いてあったが、アジア系の観光客は見かけなかった。

 少し、離れた場所にあるテ離宮というゴンザーガ家の別荘も面白かった。部屋いっぱいに描かれた壁画には圧倒された。特に巨人の間は、中にいるだけで、ねじ伏せられそうな圧迫感。馬の間などは、趣味としてわかるが、巨人の間は理解に苦しんだ。

 せっかくなので、サッビオネータにも行ってみた。マントヴァから、畑ばかりの細い田舎道を車で走って、40分ほど。到着したのが12時ちょうどだったが、観光案内所の鍵はしっかり閉まっていた。あたりに誰もいなかったし、チケットは案内所でしか買えないと案内書にあったので、しかたなく、カステッロ広場にある骨董の回廊近くのレストランでランチにした。骨董の回廊もなかなかいい感じ。
 案内所が開いたので、4か所の共通券を買い(日本語のパンフレットもあった)、その奥にある庭園宮殿から観光をスタート。見たかった古代劇場は、客席上に彫像が並んでいる木造劇場で、観客のだまし絵もあった。パルマだったか、ソックリ劇場を見たのを思い出した。
 サッビオネータは、建物や壁画がマントヴァと似ているが、規模が小さく、古い形を保っていてることから、両方を見ることで、歴史を知ることができるのだろう。星型の城壁に囲まれたサッビオネータは、「イタリアの最も美しい村」の1つにも選ばれている。

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