ピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティ

イタリア 2003年に文化遺産として登録  

宮澤乃里子/文・写真

 ミラノの空港から遠くないオルタ湖畔のオルタ・サン・ジュリオには、ずっと以前から、気に入ったホテルがあり、空港を利用する前後に何度か宿泊していた。何度目かに宿泊したとき、サクリ・モンティの存在を知り、その聖なる山に登ってみて、驚いた。緑豊かな公園のような丘に20の礼拝堂が建っていて、それぞれに、のぞき穴があり、舞台のように等身大の人形たちが、場面を表現していた。暗い中にリアルな人形がいるので、初めは気持ち悪かったが、その造形や壁画は、芸術として、祈りの場所として、素晴らしいと思えてきた。
 オルタ・サン・ジュリオのサクリ・モンティは、聖フランチェスコを祭ったもので、壁に描かれた指差しの絵に従えば順番に巡ることができる。宗教的な物語は、よくわからないが、湖に浮かぶサンジュルオ島の眺めもよく、散歩コースとしても最適。

 この世界遺産のサクリ・モンティは、9か所にある。興味をもったので、何年か前に、バァレーゼ、ヴァラッロ、クレア、オローパにも行ってみた。それぞれ、違った物語で構成されていて、興味深かった。礼拝堂を巡ると軽い登山をしたくらい歩くことになるが、どこも気持ちよい道だった。
 つい最近は、オルタのアパートに宿泊して、ドモドッソラとギッファのサクリ・モンティに行ってみた。世界遺産と言っても、ギッファなど、何もない山の中で、辿り着くのがたいへんだった。ドモドッソラのサクリ・モンティは、街はずれにあった。数か月前、スイスのロカルノから絶景を走るチェントヴァッリ鉄道に乗ってきたときは、時間がなくて、見つけられなかったので、再チャレンジだった。
 それぞれ特徴があり、聖母マリアを祭ったものやアダムとイブからスタートするもの、キリストの一生や十字架の道行もある。礼拝堂が一か所に集まっていて、あまり歩かなくても全部見られる所もあるが、山道をせっせと歩かないといけない所もある。人形が50体くらいの迫力ある大群像の場面も、1体だけの所もある。人形が語る場面に沿って礼拝堂を訪ねていくと、最後に教会に辿り着くようになっている。
 あと2か所、もう少しで全部を制覇できるかもしれない。もし、1か所だけ見たいと思うのだったら、オルタ・サン・ジュリオをお勧めしたい。綺麗に保存されていて、見ごたえがある。街も派手ではないが、気持がよく、大好きだ。

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宮澤乃里子