ランスのノートル=ダム聖堂、サン=レミ旧大修道院、トー宮殿

フランス 1991年に文化遺産として登録  

中村浩美/文・写真

 ランスはシャンパーニュ地方の中心都市だ。シャンパーニュ地方で作られる発泡性白ワインだけが、シャンパン(シャンパーニュ)を名乗れることはご存知の通り。パリ・東駅からランスまで約1間30分。
 飛行機マニアにとってランスは、1909年に世界初のエアショー&エアレースが開催された地として記憶に残るが、歴史的には歴代フランス国王ゆかりの地として重要な存在である。歴代国王が戴冠式を挙げたノートル=ダム大聖堂、戴冠式後の宴が催された大司教公邸のトー宮殿、そして初代フランス国王に洗礼したレミギウス大司教が埋葬されたサン=レミ旧大修道院が一物件として、1991年に世界遺産に登録された。
 ノートル=ダム大聖堂は、ゴシック建築の代表。初代フランス国王クローヴィスが洗礼を受けた聖堂が前身とされるが、その建設の歴史には紆余曲折があり、現存する姿に完成したのは1475年。歴史的に重要なのは、ルイ1世の戴冠式(816年)からシャルル10世の戴冠式(1825年)まで、25人の歴代フランス国王の戴冠式が、ここで行なわれてきたことだ。正面入り口ポルタイユのデザインが見事だが、その上部のアーキボールト(アーチのくり型)には、歴代国王の彫像を含むおびただしい数の彫像群がある。また外壁には2,300にのぼるという彫像が刻まれ(聖書の物語が多い)、ランスのノートル=ダム大聖堂の特徴となっている。
 聖堂内の見どころは、身廊部分のゴシック様式の典型である大バラ窓だ。二つのバラ窓とトリフォリウム(側廊上部の小通路)のステンドグラスが素晴らしい。聖堂内にはシャガールが描いたステンドグラスもある。パイプオルガンも美しい。また大聖堂の敷地内には、シャルル7世をここでの戴冠式に導いた、ジャンヌ・ダルクの騎馬像もある。

 トー宮殿は博物館として、旧大修道院は美術館として、現在一般公開されている。
 大聖堂を見学した後、ティタンジェ社のお招きで、旧修道院跡というシャンパーニュ・カーヴ(地下熟成蔵)を訪れた。フランスが誇る美酒を、本場のシャンパーニュ地方のワイナリーで、夕方までたっぷりと試飲させていただいた。
 写真はノートル=ダム大聖堂。1995年5月の撮影。

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中村浩美