山本高樹著 雷鳥社 2023年10月刊
著者山本高樹氏は1969年岡山県生まれの著述家・編集者・写真家。世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。2020年に刊行した「冬の旅 ザンスカール、最果ての谷」で第6回斎藤茂太賞を受賞している。
本書はガイドブックである。言葉を重ねるなら、インド北部の山岳地帯ラダック、ザンスカール、スピティについて紹介するきわめて優れた“極私的”ガイドブックである。極私的と形容すると語弊があるかもしれない。これは長年にわたってこの地方を旅して取材してきた著者でなければ書けなかった、この上なくリアルで親切なガイドブックなのだ。その意味においていわゆるガイド本とは一線を引くレベルに仕上がっている。
この本を手にした時、初めてガイドブック的な書籍を読んで旅に出たくなった。10年前、いや20年前にこの本が出ていたならば、激しく旅心を揺さぶられ、自分も」旅に出たのに違いない。このラダックへの旅こそは、若くなければ存分には楽しめそうもない旅だからだ。
写真も良い。こんな風景に出会いたい。この本が広く知られれば、旅先にラダックを選ぶ若者が増えるのではないか? その意味において、旅の良書にふさわしい本である。