バルト三国世界遺産めぐり

野口正二郎/文・写真

5月下旬から6月にかけてのバルト三国は、新緑の美しい落ち着いた国々であった。緯度は北欧と同様に高く、日照時間が長く、午後9時ごろまで明るい。フィンランド航空でヘルシンキ乗換、リトアニアのヴィリニュスに着いた。バルト海に面する三国の一番南の国から、バスで北上するコースになっている。

リトアニア ヴィリニュス歴史地区

1994年に文化遺産として登録

 宿泊は古いヨーロッパスタイルのホテルで、「夜明けの門」が近い。朝、手前の建物のから夜明けの門の内部へ上がって行くと、小さい礼拝堂になっており、金色に輝くマリア様のイコンの前で、膝をつき熱心に礼拝する人がいる。バルト3国のイコンは、黄金色で美しい。
 旧市街の見学は、ゴシック様式の聖アンナ教会からスタートする。民家の壁に絵や写真を貼りつけた路地があり、面白い。石畳みの路地を行くと「琥珀博物館」がある。琥珀はバルト三国の特産品で、そのお店が多い。高名な牧師の葬儀中で大聖堂をパスして、リフトでゲティミナス城に登ると、緑の多いヴィリニュスの新市街、旧市街が眼下に見えた。
 1989年8月23日、大聖堂の鐘楼の下から北のエストニアまで、600㎞以上、200万の人々が手を繋ぎ、(人間の鎖)でデモ活動を行い、1990~91年に三国のソ連からの独立に至った歴史がある。美しい街をもつヨーロッパの小国は、大国に支配される歴史でもあった。
 リトアニアの第2の都市、カウナスも美しい街だが、日本人にとっては、(日本のシンドラー)と呼ばれた杉原千畝記念館があり、訪問は外せない所である。ラトヴィアに近い「十字架の丘」も、有名な観光地であるが、十字架制作は、無形遺産に登録されている。


ラトヴィア リガ歴史地区

1997年に文化遺産として登録

 海に近い首都リガの街、新市街の新しい感じの良いホテルに泊まる。ホテルの前に(マロニエ)の花が咲いており、バルト三国どこでも、この白い花を見ることができた。花の季節である。
 旧市街の観光は、ユーゲントシュテイール建物群の見学から始まる。アールヌーボーの素敵な建物群で、多くの観光客を惹きつけていた。市庁舎広場からの散策も良い。ブラックヘッドの会館(元ギルド)、リガ大聖堂(ステンドグラスが美しい)、3人兄弟の建物、大統領府、ラトヴィア国会、スエーデン門(門の下で民族楽器クワクレ(琴のような)を奏でる女性)、猫の家、チョコレート屋さんなどを歩きまわった。昼食は、リガの郊外、バルトのベルサイユ宮殿と言われる「ルンダーレ宮殿」。ヨーロッパの豪華な貴族の館で、昼食と見学は優雅な体験であった。


エストニア タリン歴史地区

1997年に文化遺産として登録

 タリンの旧市街は城壁に囲まれた地区で、トームペアの展望台から、街並や港が見える。
 港には、ヘルシンキへのフェリーや大型客船が停泊中であった。趣のある旧市街には古い建物やお店、レストランが軒を並べて、散策には楽しいところ。ちょうど、旧市街のお祭りの日にあたり、広場のステージでは、歌や演奏が行われていた。雨が降ってきたので、ステージの見えるカフェで、ビールを飲みながら、何曲も良い音楽を聞いた。音楽好きの国で、演奏のレベルは高いと感じた。バルト三国の歌と踊りの祭典は、UNESCO無形遺産に登録されている。

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