海のプール

清水浩史著 草思社 2023年6月刊

著者は1971年生まれ。書籍編集者・ライター。テレビ局・出版社勤務を経て、独立。学生時代にダイビング部に所属していたこともあり、島や海に関する著書が多数ある。

「海のプール」とは、「(岩礁を掘ったり、コンクリートで海を囲ったりして)潮だまりに人の手をわずかに加えた場所」。潮の満ち引きで海水が自然に循環する構造になっており、海(外洋)が荒れている時でも“海のプール”では泳げる(浸かれる)。日本国内では20カ所ほどしかなく、「希少種」的な存在。本書では国内に加え、海のプールが多いシドニーも番外編として紹介している。

例えば1泊2日で能登輪島から福井越前町まで、ただ海のプールに浸かるためだけに電車やバスを乗り継いで旅をする。レンタカーをあまり使わないところが、この著者の旅らしくて良いと思うし、現地の人に声をかけてその海のプールのエピソードを聞き出したり、市役所などで謂れをきちんと調べたりしている記述は面白い。沖縄の離島やトカラ列島の海のプールは、さぞ美しいだろうと文章を読みながら感じ、評者も見に行ってみたいと感心させられた。 誰かが取り上げたことがあるテーマではなく、類書の存在しないユニークな本。文章も上手いし、よく調べているので、近くに行ったら寄ってみようと思う場所が多かった。ただ、テーマがニッチすぎて、好きな人は好きな話だが、興味がない人は向かないかもしれない(私は好きです)。