佐々木敬子著 産業編集センター 2023年6月刊
著者は「旅する食文化研究家」として、エストニア共和国外務省から「市民外交官」と認められている。エストニア人の夫とサイトで知り合って結婚して以来、エストニアをはじめとするバルト三国の家庭料理を探求している。
エストニア、ラトビア、リトアニアの三国はバルト三国という名で一からげにされているが、民族、宗教、言語それぞれ特有で決して一様ではないことなど、単に観光旅行では見抜けないところに踏み込んでいるのは国際結婚の賜物か?
本書は2022年の夏、コロナの収束が見えてやっと海外旅行が可能になってバルト三国へ渡航した著者が、「あなたのキッチンで料理を教えてください」と、家庭のドアを叩いては教えてもらった料理集。出来上がった料理はもちろん、台所や料理のプロセスの写真もていねいで、料理している普通の家庭の奥さんの服装や雰囲気に生活感が出ている。
どれひとつとしてプロの料理家やレストランの料理でなく、普通の家庭料理、お惣菜であるところに好感が持てる。ていねいな取材で作り上げた力作だと思う。著者の明るい性格が見えて、文章は少々たどたどしいが、気持ちがよい。