今夜世界が終わったとしても、ここにはお知らせが来そうにない。

石澤義裕著 WAVE出版 2023年1月刊

著者は出版関係のデザイナーで、夫人も建築関係のデザイナー。ともにほぼフルリモートで仕事をしている。本書は2015年に日本を出発し、軽自動車で車中泊をしながら8年余りもの間、世界を旅している夫婦の他に例を見ない旅の記録だ。

旅のスタートは稚内。サハリンから始まり、ロシア・ユーラシア大陸を横断。スペインからモロッコにわたり、カメルーンまでアフリカを縦断。さらに船でナミビアに向かい、南アフリカ、モザンビーク、タンザニア、ケニアへ。再びヨーロッパへ飛んで、本書の最後ではなぜかモロッコにいる。とにかくそのスケールと行動力には圧倒される。

内容もすごい。ネットを駆使し、リモートで仕事をしながら、軽自動車で道なき道を行き、荒野の真ん中で車中泊を敢行。本書に掲載されている110点の写真やQRコードでリンクされた22本の動画を見るだけでも、この旅が尋常なものではないということがわかる。 8年余にも及ぶ長旅を448ページにまとめたので、それぞれの国の描写が薄くなっているのはやむをえない。しかし、本書はその弱点を超え、さまざまなトラブルを乗り越えていく描写が魅力的。文章はやや粗いところはあるが、十分に読むに値するレベル。ウイスキーを片手に旅の気分にひたるには打って付けの書。