ネパール 1979年に文化遺産として登録。2006年に拡張登録
野口正二郎/文・写真
ネパールの世界遺産は、文化遺産として、カトマンズ盆地と仏陀の生誕地ルンビニの2か所、自然遺産として、サガルマータ国立公園(エベレスト等の山岳地帯)、チトワン国立公園(野生動物保護区)の2か所、合計4か所ある。
2015年4月25日、カトマンズの北西77㎞のゴルカを震源地とする大地震が発生し、カトマンズ盆地の人々や建造物に大きな被害をもたらしたことは記憶に新しい。地震から約1年半後の2016年11月上旬に、ネパールを訪れた。
到着日の翌朝、ヒマラヤ遊覧飛行にて、エベレストまで8000m級の山々に迫る。その後、カトマンズ盆地の7つの遺産のうちの3つの遺産を巡ることができた。
◇カトマンズのダルバール広場
カトマンズは標高約1300m、緯度は沖縄と同程度に位置している。天気が良いと暑い。旧王宮と寺院群があり、見どころは多い。ネパールは外国の支配を受けたことがなく、王朝は古代4世紀リチャビ王朝から、近世のシャハ王朝まで続いたが、2008年に廃止され、民主化の道を進むことになった。ダルバール広場は、14~17世紀の建物群が多い。
旧王宮から見学、ロハ・チョーク(中庭)では沙羅双樹の木彫りが美しい。ナサル・チョークでは現在も中庭で外国の元首が訪れた際に国家行事が行われる。洋風の壁面が美しい。南側のバサンタブル・ダルバールは9階建であったが、地震で現在は6階建てとなっている。「クマリの館」は広場の南側にある。生き神様クマリは、旧市街ネワールのサケ地区より選ばれ、女の子で3歳から11歳まで、神様として館に住み、人々の病気治療や願望成就の祈祷や占いを行っている。現在のクマリは10歳。午前11時半ごろに中庭から3階の窓を望み、クマリの出現を待つ。何人かの観光ガイドさんが3階に声を掛けると、着飾った女神クマリがそっと窓辺に寄り添い、しっかりしたお顔を見せてくれた。女神に合掌。数十秒間の拝謁であった。
王宮の北側、西側にいくつかの寺院があるが、シバ寺院等、一部倒壊した寺院が目についた。残念であるが、写真で往時を偲ぶか、再建を待つところである。広場から南にやや坂を下りた洒落たレストランでチベットモモ(餃子)やチベット鍋の昼食。鍋のスープと一緒に、ご飯や麺を食べて美味であった。帰路は、アサン・チョーク(広場)を経て大通りに出たが、平日の昼間にも関わらず、多くの地元の人出で賑わっていた。
◇バクタプル
カトマンズから、ヒマラヤの山々を望むナガルコットへの道中12㎞にある、中間に位置した町。15世紀から18世紀にかけてマッラ王朝時代に3王都のひとつとして、最盛期のネワール文化とともに発展した。バスを停めて、歩いて坂道を上ってゆくと、王宮広場への門がある。ダルバール広場の周りにいくつもの建造物がある。まずはゴールデンゲートを通り、旧王宮に入る。右手は、木彫りの窓が美しい55窓の宮殿。奥のタレジュ・チョークにはヒンズー教徒しか入ることができず、入り口よりちょっと垣間見ることになる。右奥に沐浴場があるが、飾りが立派でさすがに王宮内の施設である。王宮傍の2つの建造物は地震で倒壊した状況のままである。
陶器の広場を見ながら、トウマディー広場へ。18世紀初めに建てられたニャタポラ寺院は、五重の塔をもち、晴天に映える。石段を登って、四方を見渡すことができた。
ガイドさんに従い、更に路地を歩いて回り、木彫美術館の側面の孔雀の窓を見る。ネワール彫刻の最高傑作とされる見事な木彫りの細工である。近くのタチュバル広場に出て、広場の見えるレストランで、やっとネパールのビールを飲みながら昼食をいただくことができた。その日、午後4時前にナガルコットのクラブヒマラヤにチェックインして、ヒマラヤの山々を眺望する。大パノラマで広がる素晴らしい景色を堪能することができた。晴天続きで幸運である。
◇パタン
ナガルコットからカトマンズに戻る途中といっても、かなりカトマンズ近くに位置する町。15世紀末から300年続いたマラッカ王朝の都であったパタンは、王宮をはじめとして多くの見事な建造物が残っている。バスを降りてからかなり歩いてダルバール広場に入る。ガイドさんは歩くのが好きなようだ。一度王宮を後にして、ビルの間を歩き、マハボーダ寺院へ。インド・シカラ様式の30mの塔に無数の仏像が彫られている。震災のため修理中であった。隣りの仏教寺院も見る。
旧王宮内の見学では、ムル・チョーク、スンダリ・チョークでは小さな沐浴場もある。付属のパダン博物館では仏像や装飾品などゆっくり見学できる。クンベシュワール寺院は、1392年に建造のシヴァ神を祀る寺院。五重の塔である。ゴールデン・テンプルは、皮製品が不可で、中庭におりる場合は、革靴は履き替えて入る。それぞれのしきたりに従い見学することになる。
3か所の遺跡群は、旧王宮や寺院群で見応えのある建造物である。自然遺産・ヒマラヤの山々の絶景との組み合わせは、観光客を魅了することでしょう。