小千谷縮・越後上布(無形文化遺産)

新潟県小千谷市・南魚沼市 2009年に無形文化遺産として登録  

広井忠男/文

 平成25年夏、JTWO一行30名は越後小千谷を公式訪問した。闘牛、錦鯉、詩人西脇順三郎氏(ノーベル文学賞候補者)の記念碑ほか、多くの文化財を見学した中に、名産品の小千谷縮・越後上布(夏用高級織物)がある。昭和30年5月12日に、国の重要無形文化財総合指定第1号に指定された。続いて約半世紀後の平成21年9月30日にはユネスコの無形文化遺産に、日本の染織技術としては第1号で登録された。古来高級麻織物として全国に知られ、その歴史は千数百年に及ぶ。奈良の正倉院にも記録が残されている。朝廷、将軍家への献上品ともなり、名将上杉謙信も盛んに贈呈している。越後塩沢町の文人鈴木牧之は名作『北越雪譜』に「雪ありて縮あり されば越後縮は雪と人と気力相半ばして名産の名あり」と記している。雪国の湿度、忍耐強い雪国の女性達の高い技術と努力が結晶している。

 趣味人の高級織物は高い評価を得てきた。フォーマルな会席には着用できない点がまた独自のおしゃれとして珍重された。ユネスコ登録の無形遺産、国指定重要文化財は、現在1年に三十反ほど織られ、価格は300万円から400万円はする。セレブな奥様方のほか、かつては銀座高級クラブの女将や名妓が着用したが、昨今は時代が大きく変化した。女性たちの着物離れも著しい。小千谷市、塩沢町の産地では一反数十万円の品も生産している。高価ではあるが「着たら離せぬ味の良さ」(中山晋平詞)の特性を有し、100年は着用できる“三代物”ともいわれている。人間国宝の糸造り、苧績み(おうみ)の女性たちも高齢、他界されたが、縮布技術保存協会では、昭和43年より苧績みと織布の伝承者養成事業に鋭意取り組んでいる。沖縄の宮古上布、芭蕉布と共に、日本の三大上布として、保存、普及への産地の努力は日々続けられている。

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広井忠男