中村 浩美 Hiromi Nakamura

<2003年>

WRITING

 主な執筆活動は、著書『読んで愉しい旅客機の旅』(光文社新書)を、8月に出版したほか、「CIAC REPORT」(財・中部産業活性化センター)に、「サイエンスフロンティア」を連載。この連載は2004年も継続中。
 また、毎日新聞の読書欄「この人・この3冊」に、ライト兄弟初飛行100年を記念して執筆したのが下の記事。中村浩美が選ぶライト兄弟伝の推薦図書3冊を紹介。(2003年12月14日掲載) 下の右は、この記事の中で、和田誠画伯が描いた僕の似顔イラスト。似ていますか?

STAGE

 2003年の「親子で学ぶサイエンススクール」のハイライトは、坂田俊文先生(財・地球科学技術総合推進機構理事長、東海大学教授)をゲスト講師に迎えての『水惑星・地球の不思議』(8月10日、静岡市)と、宇宙飛行士の土井隆雄さんを特別講師に迎えての『世界宇宙飛行士会議 in 花巻・サイエンスステージ』(10月16日、花巻市)だった。

TRAVEL

U.S.A (July) <ライト兄弟初飛行100周年・聖地巡礼>

1903年、人類初の動力飛行に成功したライト兄弟のライトフライヤー1号機。ワシントンのスミソニアン国立航空宇宙博物館に永久展示されている。

初飛行の地、ノースカロライナ州キティホークのキルデビルヒル。4回の飛行の着陸点を示す標石が、1列に並ぶ。近くには、兄弟が使った丸太小屋も保存されていた。

キルデビルヒル一帯は、国立ライト兄弟記念公園として整備されている。丘の上には、巨大なモニュメントと兄弟の胸像が建てられている。

Dayton Air Show <ライト兄弟初飛行100周年記念航空ショー>

 ライト兄弟の故郷、オハイオ州デイトンでは、初飛行100周年を記念して大規模な航空ショーが、開催された。パイオニア時代や第一次大戦当時の復元機から、最新鋭の最高軍事機密であるステルス機(レーダーに探知されない、いわゆる見えない飛行機)まで約100機が、飛行展示、地上展示された。
 下の写真左は、デモ飛行するライトB型の復元機。モデルBは、ライト兄弟が1910年に完成させた、初めての量産型機だった。右は、ショー会場をフライパスするステルス爆撃機ノースロップ・グラマンB‐2A。1999年のユーゴ空爆(コソボ紛争)における花形兵器だ。その特異な機影に、ライト兄弟に始まる航空技術史のひとつの到達点を見た。

ENOLA GAY <原爆投下B‐29爆撃機の展示>

 2003年12月15日に、スミソニアン国立航空宇宙博物館の新館(アドヴァー・ヘイジー・センター)が開館した。ワシントン・ダレス空港に隣接するこの新館には、ボーイング707や、コンコルドまでを含む約80機の歴史的な機体が、一堂に展示されている。中でも注目されるのが、広島に原爆を投下したボーイングB‐29爆撃機「エノラ・ゲイ」の完全復元機だ。
 「エノラ・ゲイ」の展示案内板には、技術史的意義と、原爆投下の事実だけが記載されており、原爆被害の実態には触れられていない。日本の被爆者団体や、米国の歴史学者などが説明文の変更を再三申し入れてきたが、結局変更されずに公開された。開館日には、広島や長崎から被爆者や被爆二世らが抗議のため訪れたが、スミソニアン協会では航空技術史の記録としての側面だけの記述を、今後も変更するつもりはないという。

(写真は公開前に、JTWO飛行機研究会として同館を訪問した際に、 特別許可を得て撮影したもの)

PARIS (June) <パリ航空ショー>

世界で最も古い歴史と最大の規模を誇る「パリ航空ショー」だが、今回はイラク戦争での確執を反映して、米国は出品はしたものの、デモ飛行はなし。従って飛行展示は、戦闘機も旅客機もヨーロッパ勢のほとんど独壇場だった。わずかにブラジルの小型旅客機エンブラエル170が目を引いた。

<パサージュ散策>

 パリで、新しい愉しみを見つけた。パサージュ巡りである。パサージュは18世紀末にパリに出現した、ガラス張りの屋根をもつ商店街。ギャルリ(歩廊)とも呼ばれる。その全盛期は19世紀で、40箇所ほどあった。流行の発信地であり、散策路であり、文化や職人技の温床でもあり、時にパリ・アンダーワールドへの入り口でもあった。
 パサージュは20世紀になって廃れたが、近年見なおされて再建も行われ、17箇所ほどが現存している。19世紀グラン・ブールバールの雰囲気を伝えるブティックや、カフェ、レストラン、ホテルなどがある。古本屋、古い切手やポスター、絵はがき、写真などを売る店がかならずあるのも嬉しい。今回は12箇所を駆け足で巡ったが、次回からはひとつずつじっくりと散策したい。パサージュに憑かれた最近の愛読書は、もちろんヴァルター・ベンヤミンの『パサージュ論』(全5巻)と、ルイ・アラゴンの『パリの神話』だ。

CANADA(Feb.) <オーロラ観測>

天空を彩る壮大な光のショー。さまざまに姿を変えながら揺れ動く光の舞。カナダ・グループの面々と、カナダ・マニトバ州のチャーチルへオーロラ観測へ。北緯59度、2月の気温は日中でもマイナス30度C。オーロラを、現地ではノーザンライツという。北極光だ。
 太陽からのエネルギー粒子が、地球の磁力線に沿って大気に突入する発光現象。

滞在中の3夜とも、見事にノーザンライツが出現。特に2夜目は、北東の北斗七星のあたりに最初出現し、それから光のカーテンが徐々に広がって、ついには周囲360度が光のショーの舞台になった。僕たちの感動と興奮は午前零時を過ぎても続いた。
(写真は同行のカメラマン伊藤厚氏の撮影。第2夜の最低気温はマイナス50度C!)

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